全員 離婚と持ち家と住宅ローン
2017.01
05

住宅購入に関するご相談は多岐に渡りますが、最近は離婚のご相談が増えています。厚生労働省が発表している平成21年度「離婚に関する統計」によると、離婚件数は昭和25年に6.9万組だったものが平成14年には29万組まで増加となりました。平成15年以降は減少に転じ、平成20年は25.1万組となっています。

離婚による問題はさまざまですが、住宅に関しては大きく2点あります。1.財産の所有権と誰が住むのか、2.住宅ローンの返済です。1つ目の所有権は離婚そのものの影響もあるため、裁判になるケースでは裁判所に判断が委ねられますが、ここでは住宅ローンがどうなるのかを見てみることにします。

住宅ローンの債務者
住宅ローンを借りるときには、単独債務か連帯債務かを決めます。単独債務とは文字通り一人でローンを借りますが、場合によっては配偶者や親が連帯保証人になることがあります。連帯保証人は主債務者が返済できなくなった場合、代わりに返済する義務を負います。連帯債務とは配偶者や親が主債務者と共に一つのローンを返済していくことで、主債務者と連帯債務者に差はありません。

離婚後の住宅ローンの扱いは、離婚の原因が夫と妻のどちらにあるのか、金融機関には一切関係がありません。金融機関は返済期間中、安全に債権管理ができ、最後までローンを返済してくれればOKです。ただ、それが難しいのです。

具体的な事例を挙げてみましょう。離婚することが決まり、妻が家(所有権は夫と妻が1/2ずつ)に住み続け、ローンは夫が支払い続けるという場合です。

夫婦の連帯債務で離婚後は夫がローンを支払い、妻が家に住み続ける場合
妻が今後も住み続けるのですから、夫の所有権を財産分与として妻に譲渡して欲しいと申し出たとします。夫の所有権を妻に譲渡できるかどうかは、金融機関の承諾が必要で交渉となります。所有権移転登記は金融機関の承諾が無くとも可能ですが、住宅ローンの契約は、自分が住む為の住宅購入に対する借り入れということで、債務者本人が住まない、所有権が無くなるということ自体が契約上はNGで違約になる可能性が高く注意が必要です。

そして元妻が住んでいる家のローンを、今や他人となった元夫である主債務者が支払っている途中で返済が滞った場合は、連帯債務者である元妻に支払い義務が生じます。

そこで、元妻が金融機関に「離婚の時の話し合いで、元夫がローンを払う約束なので、私の連帯債務者という立場を解除してください」と申し立てたとしても、金融機関側からすれば、債権回収が難しくなるだけですから原則として許可されません。ただし、ローン残高が少ないなど、交渉の余地がある場合もあります。また、ローンを借り換えることで連帯債務者としての立場を外すことができる場合もありますので、借り換え先の金融機関と交渉してみましょう。

もし、連帯債務者としての立場が解消できない場合は、主債務者の返済が滞れば返済の請求が来て、その支払いが困難であれば、ローンの担保になっている住宅には住み続けることができなくなってしまいます。

夫婦の連帯債務で離婚後は妻がローンを支払いながら住み続ける場合
家に住んでいる方がローンを支払うのですから何も問題は無いように見えますが、問題は所有権です。最後までローンを完済したとして、所有権は夫と妻が1/2ずつであれば、1/2は夫の財産ということになります。また返済中に借り換えや、金利タイプの変更などの手続きには主債務者と連帯債務者の同意が必要ですから、離婚後もことあるごとに連絡を取り合う必要があります。可能であれば、離婚の際に金融機関と交渉して夫の持ち分を所有権移転しておきましょう。

夫の単独債務で離婚後は夫がローンを支払い、妻が家に住み続ける場合
ローンは夫が単独で借りているため、返済が滞っても請求が妻のところに来ることはありません。しかし、建物や土地はローンの担保になっていることが一般的ですから、そのまま延滞が続けば強制的に退去せざるを得ない状況になります。つまり返済の請求は来ませんが、結果として住み続けることができない可能性があるという点では、連帯債務と変わらないということです。

離婚による住宅ローンの扱いはかなり面倒なことが多く問題解決が難しい場合もあります。特に金融機関との交渉が大切になりますので、毎月の返済をきちんとしておきましょう。
市川 貴博(いちかわ たかひろ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 主任研究員
日本FP協会静岡支部 幹事
公開日: 2017年01月05日 10:00