全員 損害区分の変更により地震保障が変わる
2017.03
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平成29年1月に地震保険の損害区分が従来の3区分から4区分に改定されました。全労済の新自然災害共済は平成27年2月から4区分になっています。これに伴い地震等で罹災された場合の給付額も変わります。加入者から見た変更点を検証してみましょう。

地震保障の仕組み
地震保障は地震、噴火、またはこれらの影響による津波が原因による損害を保障します。契約金額は、建物、家財それぞれについて、地震保険であれば火災契約金額の30~50%の範囲(※1)、全労済の新自然災害共済(大型タイプ)であれば30%(※2)の範囲までで、地震保障単独では加入できません。

地震保険は、元受けとなる損害保険各社が負う地震保険責任の全てを日本地震再保険株式会社に再保険し、一部を元受けの損害保険会社に戻すように再々保険し、一定額以上の巨額な地震損害は政府への再々保険により成り立っている官民一体の制度です。具体的には1,153億円までは全て損害保険各社が支払い、それを超えて4,379億円までの部分は政府が1/2を支払い、それを超えて11兆3,000億円までは政府が99.7%を支払う仕組みになっています。この仕組みにより、基本的なプランでは損害保険会社を問わず保障内容も掛金も一律です。

損害区分の変更による給付額の増減
火災保障は実際の損害を保障します。一方の地震保障は、大地震等の際に、数多くの加入者へ迅速に保障金を支払うため、実際の損害額ではなく、地震保険は全損、半損、一部損、全労済の新自然災害共済は、全壊、半壊、一部壊と被害の程度を3区分し、その区分に応じて保険金や共済金が支払われていました。

その結果、東日本大震災ではおよそ1兆2,706億円の保険金が支払われ、地震保険の準備金はほぼ半減してしまいました。今後発生が予想される東海、東南海、南海地震や首都直下地震の際の保険金支払いにも対応が求められるため、徐々に積み上げられた準備金は、現在11兆3,000億円になっています。しかし、今後30年間でこれら4地震が全て発生すると想定した際の収支計算によると、約1.3兆円~2.3兆円の赤字が見込まれています。制度維持のためにいくつかの対策が練られましたが、最終的には保険料の値上げと損害区分の変更が決定されました。

以前の地震保険の損害区分は主要構造部の損害額が建物時価額の3%以上20%未満で一部損、20%以上50%未満で半損、50%以上になると全損と区分され、一部損で保険金額の5%、半損で50%、全損で100%の保険金が支払われました。平成29年1月からは、半損のうち20%以上40%未満を小半損、40%以上50%未満を大半損と区分し、小半損で保険金額の30%、大半損で60%を支払う4区分に変更されています。つまり改定前と比べて大半損に該当する場合は支払われる保険金額が10%増加しますが、小半損に該当すると20%減少します。

全労済の新自然災害共済は、建物の損害額が100万円以上で一部壊、建物の再取得価額に対する損害の割合が20%以上70%未満で半壊、70%以上になると全壊と区分され、一部壊で共済金額の10%、半壊で50%、全壊で100%の共済金が支払われていました。平成27年2月からは従来の半壊のうち、20%以上50%未満を半壊、50%以上70%未満を大規模半壊と区分して、半壊は以前と変わらず共済金額の50%、大規模半壊で60%を支払うように増額されたのです。

損害の認定で一番多いのは一部損
日本地震再保険株式会社の統計によると、東日本大震災による損害区分で一番多かったのは一部損で、保険金を支払った全体の70.9%を占めます。なお、半損は24.2%、全損は4.9%にすぎません。一番件数の多かった一部損を2分割し、比較的被害の大きい一部損の給付を増額することも検討されましたが、査定の迅速性を大きく損ねるという理由から実現しませんでした。また、支払金額の割合でみると一部損は24.5%、半損が51.4%、全損が24.1%となっており、査定の迅速性と財源確保を理由に、一番支出の多かった半損部分の支払い額の削減を目的とした区分変更がなされたようです。

地震保障だけで近年多発する大きな地震等の損害から住宅を再建することは難しいともいえます。しかし、保障に加入していなければ、住宅ローンなどがある場合において、生活の再建すらままならない状況に陥ります。地震保障に加入する際には、保障額の設定はもちろん、罹災した時にどれくらいの保障が受けられるのかをしっかり確認しましょう。


※1建物5,000万円、家財1,000万円が限度
※2標準タイプであれば火災契約金額の20%

市川 貴博(いちかわ たかひろ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 主任研究員
日本FP協会静岡支部 幹事
 
公開日: 2017年03月23日 10:00