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新規契約保険料、なぜ上がったり下がったり?

2017年4月2日契約より、新規契約の生命保険料が値上げしました。日本銀行のマイナス金利政策の影響を受け、生命保険料の主要な運用先である「日本国債」の利回りが下がり、そのために予定した運用益の確保が難しくなったことが原因です。予定利率を下げざるを得なくなり、保険料が値上がりしてしまいました。値上がりした保険は貯蓄性の高い円建ての保険商品である終身保険、養老保険、学資保険、年金保険、法人契約で言えば、長期平準定期保険や逓増定期保険などです。掛け捨ての死亡保障や医療保険、がん保険などは影響ありませんでした。また、貯蓄性の高い外貨建て保険商品も影響ありません。外貨建て保険はその国の国債、例えばドル建て終身保険は「米国債」で運用しているため、今回の日本国債の利回り低下による予定利率の引き下げとは関係がないからです。上記円建て保険商品では、3月の駆け込みが物凄く、未だに契約の成立が遅れていると聞きます。今後は円建て終身保険や年金保険などは、外貨建てや株式や債券などで特別勘定で運用する変額保険などにシフトしてきています。
 
そんな中、今度は2018年4月には、今回値上げの影響を受けなかった死亡保障などの保険料を全面改訂するようです。今度は何が起こっているのか?ということですが、平均寿命が延びたため、「標準死亡率」を算定する団体である日本アクチュアリー会が11年ぶりに下げるため、これを参考に保険会社は保険料を決めていることもあり、死亡保障の保険料を下げる予定です。もちろんこちらも新規契約のみで、既契約には影響がありません。それとは反対に長生きにより支払いが増えると見込まれる医療保険や介護保険などは値上げする予定です。がん保険はどうかというと、早期で発見できるようになった医療技術の進歩や治療効果により、支払いがかなり多くなったと聞きます。昔のがん保険では支払に該当しなかったけど、最近のがん保険では支払に該当したとか、がん保険自体が治療給付に重点をおいた商品になってきているため、保険料の割には保障内容が充実しており、治療していれば無制限で給付を受けられるなど、商品が優れているため支払事由に該当しています。よってがん保険も値上げの可能性が高いと考えられます。1年後には、また駆け込みが想定されます。医療保険、介護保険、がん保険などの保険商品に興味がある方、必要性を感じている方は、早めのご検討をお勧めします。
 
保険料が決まる3要素「予定死亡率」「予定利率」「予定事業費率」のうち2つが変動することを受け、各保険会社の「予定事業費率」が最後の1つですが、ここは各保険会社の企業努力が関係する部分です。「予定事業費率」が高いほど保険料が高くなり、「予定事業費率」が低いほど保険料は安くなります。従って今後は企業努力が出来る会社、うまくいかない会社、それによって同じ内容の保険に加入しようとしても保険料の格差時代がやってくると考えます。
 
また、人口知能AIによって、いつしか保険もイエス・ノー形式で質問に答えて、最後に「あなたに必要な保険は○○生命の△△保険です」という結果が出て、そのまま申し込みをするというセールス不要な時代がくるかもしれません。保険会社にとっては人件費の大幅カット、募集人に支払う報酬や代理店に支払う手数料などが減り、今よりもっと安い保険料を顧客に提供できるようになるかもしれません。消費者は大歓迎でしょうが、保険会社に取っては保険料収入の大幅なダウンで大変な時代がくるかもしれません。
保険会社も保険販売ビジネスだけではなく、他の業種のビジネス展開や提携をするなどして将来の保険金給付金支払いに備える必要がでてくるでしょう。経営手腕が問われます。現にすでに保険ビジネス以外にも保険業務に絡めて介護ビジネスなどに着手している会社もあります。かつて、多種多様なビジネスを展開し、不幸にも失敗していった企業、M&Aや吸収合併されていく企業を見ていた時に、「やっぱり餅は餅屋。欲を出して色々手を出しすぎ。」と思っていましたが、そうは言っていられない時代が来るのだろうなと実感するこの頃です。
田中 美子(たなか よしこ )
AFP ファイナンシャル・プランナー
2級ファイナンシャル・
プランニング技能士
TLC(トータルライフコンサルタント)副称号:生命保険協会認定FP
損害保険上級資格
DCプランナー2級
キャリアコンサルタント
 
 
公開日: 2017年05月04日 10:00