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家は資産であり続けるのか

 時代を感じてしまうでしょうが、筆者と同年代の50代であれば「男子たるもの家を持って(建てて)一人前」と言われたことが1度はあるはずです。もしかしたら、40代、数は少ないけれども30代でも言われたことがある方がいるかもしれません。結婚して自分の家を持って初めて一家を背負って立つ「大黒柱」と認められるわけです。その根本にあるのは「家」は財産いう概念だと思われます。

 でもいつまでも家が財産である続けると思うのは幻想に過ぎないと認識すべきときが来ています。持ち家がいいのか、賃貸住まいがいいのかの論争があると、持ち家派が主張するのは、住宅ローンを払い終えれば「家は資産として残る」という考えです。確かに家は残りますが、それが今までのように資産として残るかは別問題と考えるべきです。

 ご存知の通り、日本は既に人口が減少している国です。そのような人口減少化の社会であるにも関わらず、毎年数十万戸の家が建てられているのです(住宅の取り壊しデータが公表されていないためネットで数万戸かもしれません)。人口が減少している=需要が減少しているにも関わらず、家が増えている=供給が続いているということは、だれが考えても家が余っていることが理解できるはずです。昨今、話題になっている空き家問題、日本全体では13%にのぼるそうです。10軒あれば1軒強は空き家ということになります。空き家になる割合は、築年数が経過すれば経過するほど高くなるそうです。しかも、10軒に1軒強が空き家という状況ですから、利便性が劣る家ほど空き家になる確率が高いそうです。

 自分が賃貸に住む場合と仮定して家探しを考えてみてください。仕事=勤務先を基準として10キロ圏内、20キロ圏内と探す範囲を広げていくはずです。街の様子や賃料を勘案しながら沿線を選んで、最寄り駅が決まったとしましょう。次は駅から徒歩5分以内、10分以内、15分以内と広げていき、それでもよい物件が見つからなければ隣駅に移る。さらに、物件の築年数なども検討材料に加えて・・・・、こうした物件を探す過程の中で、早いうちから条件にひっかかる家ほど資産価値が高いといえ、遅くなるほど利便性が劣るため、資産価値が劣るということになるでしょう。この家選びに該当するのが地方の家、正確には実家と言い換えてもよいでしょう。自分を含め子どもたち全員が仕事のために実家から出てしまい、今の住まいで生活の基盤を作っているため実家に戻るつもりはほとんどないという状況なのです。そんな実家を相続したとしても、面倒を背負い込んでしまっただけです。保有しているだけで固定資産税は取られるし、風通しを行わないと家の劣化が激しく、庭の草木が伸びれば近所から苦情がくる始末。しかも古い家なので売ろうにも売れないのです。地方の家(実家)を売りに出して早3年、5年などという人もいるのです。つまり、家は資産という状況は地方から崩壊し始めているのです。雨露がしのげる住まい(終の棲家)程度と考えるべきなのです。ただ、家はこの世に1つしかないものという希少性を考えれば、東京の都心5区など、あるいは地方でも一等地にある物件であればそれなりの資産価値が残り可能性は否定できません。それ以外は、固定資産税を計算する評価額が出ているのですから、資産価値がゼロとは言いませんが、何十年と苦労して住宅ローンを払ってきた家でも、資産価値はほとんどないと認識すべき時代が来ていると考えるべきなのです。将来、何らなの事情で貯金額がゼロになったとしても、最後に家が残っているから大丈夫というのは幻想に過ぎないのです。


深野 康彦(ふかの やすひこ)
AFP ファイナンシャル・プランナー
有限会社ファイナンシャルリサーチ 代表
 

公開日: 2017年07月06日 10:00