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2年後に備えよ

このコラムを読まれる時は総選挙(衆議院選挙)が終わっているかもしれません。どの政党が議席を増やし、またどの政党が議席を減らした等々は執筆時点ではわかりません。ただ1つ言えることは「家計を2年後に備えなければならない」ということです。
2年後のことなんて鬼が笑うどころではないのかもしれませんが、総選挙では事実上2019年10月からの消費税の引き上げを容認しているからです。消費増税による増収分の一部を教育無償化、高等教育の負担軽減などに充てるのは一見家計にやさしい政策に思えます。ただし、それも景気が良い状況であればという前提条件があることを忘れてなりません。

  前回、消費税が5%から8%に引き上げられた2014年4月以降の景気を振り返ってみましょう。当時、消費税引き上げの影響は軽微で済む、一時的に景気は落ち込むがすぐ回復するというのが専門家筋の大多数の意見でした。実際の経済成長率(GDP成長率)は、2014年1月~3月期6.7%のプラス、同4月~6月期7.1%のマイナス、同7月~9月期1.9%のマイナス、同10月~12月期1.5%のプラスでした。2四半期でマイナス圏を脱したのだから軽微で終わったと納得されるかもしれません。
では、私たちの家計はどうだったのでしょうか。総務省が毎月公表している2人以上世帯の消費支出によれば、2014年4月は対前年同月比4.6%のマイナス、同5月は8.0%のマイナスと続き、プラスに転じたのは1年後の2015年5月なのです。ただし、1年前に消費税が引き上げられたことによる消費低迷の反動という要素を差し引けば、同年の8月あるいは2016年2月までかかった言えるのです。しかも、対前年同月比で2ヵ月連続してプラスとなったことは2017年6月まで1度もありません。ちなみに2014年5月の8.0%のマイナスは、東日本大震災があった2011年3月に匹敵する消費の落ち込みなのです。当時、東日本では保存食などさまざまなものが店舗の棚から消えてしまったことを覚えているでしょう。
当時は、必要なモノを買いたかったけれども買えなかったというのが実情でした。けれども2014年5月はモノの不足は全くないにもかかわらず、私たちは家計防衛のために財布の紐を締めたのです。消費が増えないのは消費税が引き上げられた要因だけではなく、収入が増えないという要素もあるでしょう。しかし、2014年4月の消費税が8%に引き上げられてから、5年半で消費税は5%から10%へと倍になる予定なのです。2014年以前に消費税が引き上げられたのは1997年4月の3%から5%の時。当時、言い換えれば17年前の事を覚えている人がどれだけいるでしょうか。覚えている人は、消費税が引き上げられる前に保存が利く食品、ティッシュペーパーや紙おむつなど日用品を買いだめしたのです(だから2014年3月の消費は駆け込み消費で盛り上がり対前年同月比7.2%のプラス)。
2年後、消費税が引き上げられる時は、大多数の人は前回2014年4月の引き上げを覚えているはずです。とすれば、前回の消費税引き上げ時以上に私たちは家計防衛に入るのではないでしょうか。当然、消費動向の振れ幅は前回以上となり、結果としてモノが売れなくなることから、脱却が見えていたデフレに再び逆もどり。私たちの収入は増えないためさらに消費を控える。さらに収入は増えず、またまた消費を控えるという負のスパイラルに陥りかねないのです。
でも、東京五輪に向けてのインフラ整備が佳境に入ることから落ち込みは軽微で済むのでは?と思われるかもしれませんが、日本の国内総生産(GDP)の6割弱は個人消費が占めているのです。表現は悪いですが、インフラ整備はたかが知れているということなのです。


深野 康彦(ふかの やすひこ)
AFP ファイナンシャル・プランナー
有限会社ファイナンシャルリサーチ 代表
 
公開日: 2017年10月12日 10:00