全員 主流になるのかトンチン年金保険
2017.02
09

四半期ごとに公表されるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用成績に一喜一憂し、平成28年12月中旬に可決・成立した「年金制度改革関連法」が野党から「年金カット法案」と批判される等々、私たちの老後を不安にさせる材料には事欠きません。ちなみに「年金カット法案」と批判された年金制度改革法案と呼ばれる法律の正式名称は、「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金等の一部を改正する法律」という長い名前がつけられているものです。その内容は割愛させていただきますが、法律の謳い文句としては、年金制度を将来に向かって長続きさせるためのものです。

いずれにしても老若男女が不安を持つ老後ですが、近年「下流老人」が話題になっていることから、自分は下流老人にならないかとなおさら不安になっている人も多くいます。その理由は、男性の4人に1人、女性の2人に1人が90歳まで生きる長寿時代となっていることです。リタイア後は公的年金が生活の柱になりますが、その公的年金だけで暮らすのは難しく、また年金不安が尽きないことから、自助努力で資産の山を築き、その不足分を補って生活して行くことになるわけです。曰く、長生きすればするほど「資産が底をついてしまうのではないか?」と不安になるわけですが、そんな長生きの不安を解消する手立てとして今後注目を浴びそうなのが、「トンチン年金保険」です。

トンチン年金保険は、一生涯年金を受け取れる終身年金の一種で、その名称は仕組みを考えたイタリア人の名前に由来しています。終身年金は、被保険者が存命である限り年金が支払われ、かつ低金利の長期化により運用益を稼ぐことが難しくなっていることから、販売停止や加入を躊躇するほど保険料が高額なものも多くなっています。そこでトンチン年金保険では、年金受取開始前に死亡した人への死亡保険金などを抑え、その分を長生きした人への年金に回すことで保険料を抑えているのです。端的にいえば、早く亡くなった人は不利になり、長生きするほど有利となる仕組みです。

払込保険料と受取年金額から、正確には何歳で元が取れるか計算することはできますが、いつ亡くなるのかは神のみぞ知る、言い換えれば亡くなる時期を私たちがコントロールすることは不可能です。つまり、損得で加入を検討するのではなく、長生きした場合のリスクに備えるための年金保険なのです。そもそも生命保険は「万一」や「もしも」といったリスクに備えるために加入するものであるため、トンチン年金保険も本来の保障を得るための保険と考えるべきものです。

現在、トンチン年金保険を扱っているのは日本生命保険のみ。他社が追随するかは定かではありませんが、平成29年4月より生命保険の標準利率(金融庁が定め、生命保険会社が予定利率を決める際の指標)が1.0%から0.25%に大幅に引き下げられることが決まっています。標準利率が引き下げられれば、予定利率も引き下げざるを得なくなり、結果として個人年金保険などの貯蓄性のある保険の収益率は低下することになります。言い換えれば、貯蓄性の個人年金保険などへの加入はさらに厳しくなることが予想され、トンチン年金保険のような仕組みを取り入れざるを得ないと思われてなりません。自助努力の一つである個人年金保険も「長生きした場合の安心感(保障)」を買う時代に変化しつつあると理解すべきでしょう。なお、女性の方が男性よりも長生きであることから、同条件のトンチン年金保険に加入するならば、女性の方が保険料が高くなっています。

深野 康彦(ふかの やすひこ)

AFP ファイナンシャル・プランナー
有限会社ファイナンシャルリサーチ 代表
公開日: 2017年02月09日 10:00