全員

消費税増税で住宅取得を急ぐべきか

2019年10月から消費税が10%に増税されるため、住宅業界では駆け込みを狙ってさまざまなキャンペーンが展開されています。しかし、消費税が10%になるメリットもあるため、急いで8%の消費税に間に合わせるべきか、しっかり準備して10%の消費税を支払うべきかを検討する余地があります。

消費税率8%で購入するためには
2019年9月末までに購入する住宅の引き渡しを受けることが必要です。ただし、増税前の2019年3月31日以前に建築・工事等の請負契約を行っている場合には、経過措置が適用され2019年10月1日以降の引き渡しでも消費税は8%が適応されます。

消費税率10%の場合のメリット(その1)住宅取得資金の贈与の非課税特例の拡充
住宅取得資金の贈与の非課税特例とは、一定の期間内に父母や祖父母など直系尊属から住宅取得等資金を贈与された場合、一定の額まで贈与税が非課税となる制度です。以前からこの制度はありましたが、2015年1月からは同年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げを視野に、消費税率が8%の場合と、10%の場合で2つの制度が並行していました。

消費税が8%の場合、住宅購入の契約日による非課税限度額※1は次のとおりです。
2015年12月31日まで            1,000万円
2016年1月1日~2020年3月31日     700万円
2020年4月1日~2021年3月31日      500万円
2021年4月1日~2021年12月31日  300万円

消費税が10%の場合、住宅購入の契約日による非課税限度額※2は次のとおりです。
2019年4月1日~2020年3月31日    2,500万円
2020年4月1日~2021年3月31日    1,000万円
2021年4月1日~2021年12月31日     700万円

例えば消費税率が8%である2018年11月に、住宅取得資金として2,000万円を贈与されても700万円しか非課税になりません※3。贈与税を回避するため1,300万円は贈与を受けずに、住宅ローン(金利1.68%※4、30年返済)を借りるとすれば、356万円もの利息を余計に支払うことになります。もし消費税が10%になった後に住宅を購入すれば、贈与される予定の2,000万円すべてが非課税になり、ローンの借入額を減らせるため利息を大きく削減できます。

消費税率10%の場合のメリット(その2)すまい給付金
すまい給付金は、消費税率引上げによる住宅取得者の負担を緩和するために創設された制度であり、消費税率が8%と10%の時では給付額が大きく異なります。また、巷の情報では年収により給付額が異なると解説されているものがありますが、厳密にいうと都道府県民税の所得割額により給付金の額が異なります。なお、都道府県民税の所得割額は毎年6月頃に送付される住民税の決定通知などに記載があります。

消費税率が8%の場合、都道府県民税の所得割額による、すまい給付金の額は次のとおりです。
6.89万円以下            →30万円
6.89万円超8.39万円以下    →20万円
8.39万円超9.38万円以下    →10万円
9.38万円超            → 0万円

消費税率が10%の場合、都道府県民税の所得割額による、すまい給付金の額は次のとおりです。
7.60万円以下            →50万円
7.60万円超9.79万円以下    →40万円
9.79万円超11.90万円以下    →30万円
11.90万円超14.06万円以下    →20万円
14.06万円超17.26万円以下    →10万円
17.26万円超            → 0万円

政令指定都市※5や神奈川県の場合は都道府県民税の所得割額が異なり注意が必要です。詳しくはすまい給付金のホームページでご覧ください→http://sumai-kyufu.jp/

年収500万円、家族が妻(専業主婦)、子ども1歳、0歳の4人世帯の場合、すまい給付金は消費税8%で10万円、消費税10%で40万円です。建物が2,000万円だとすると消費税※6は2%増えて40万円の増税ですが、すまい給付金が30万円増えるので実質10万円の支出増で済みます。しかし、同じ家族構成でも年収が800万円の場合、消費税が8%でも10%でも、すまい給付金は給付されないため、消費税の増税分だけ支出増になります。

建物購入金額にもよりますが、住宅購入のために頭金などの準備が整っていて、無理せず急ぐことが可能である場合を除いては慎重に行動したほうが良さそうです。わずかな消費税の増税を嫌うがために、多額のローンを借りて多額の利息を支払うのでは本末転倒です。

※1 省エネ住宅等はいずれも500万円多くなる
※2 省エネ住宅等はいずれも500万円多くなる
※3 厳密には暦年課税に対する110万円の基礎控除があるため合計810万円が非課税になる
※4 2018年11月5日現在 東京都内 【フラット35】平均金利(手数料定額型)
※5 2018年度以降
※6 土地の購入代金には消費税は課税されない
市川 貴博(いちかわ たかひろ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 主任研究員
日本FP協会静岡支部 幹事
公開日: 2018年11月22日 10:00