全員

2万7千円の価値

生活経営計画書でもある、ライフプランを作るきっかけで一番多いのが住宅を購入したいと思い始めた時です。
住宅を購入されたい方は、様々な問題があったとしても、それに対処する計画や予防策を講じて、住宅建築計画を進めていきます。安心安全な構造や利便性、予算やローン、各種優遇制度など、お金にまつわる話も大切ですが、購入した住宅に住んだ後の「生き方」について、少し視点を持っておくことも必要ではないでしょうか。

これからお伝えする話は、施工会社や金融機関では話題にもならないことです。しかし、「損得」よりも「損益」を重視する私が、世間話をしながらも必ず意識してお伝えし、参考になったと感心されるエピソードの1つです。

以前、自宅をリフォームした時の話。
母が「トイレはどのタイプにしたの?」と聞いてきたので、私は「掃除のしやすい最新式!」と答えました。
すると「まさか自動で勝手に蓋が開閉したり勝手に水が流れたりしないよね?」と母は嫌そうな顔。
掃除のしやすさを重視していた私は、その点については全く意識がなかったため、改めて仕様を確認すると『オート開閉、オート洗浄』となっていました。
「便利でいいんじゃないの?」と言った私に、母は呆れた顔で言いました。
「とんでもない!便利も行き過ぎると取り返しがつかないことになることがあるんだよ」と力説。

母の言い分としては…
(1)たくさんの人が出入りする施設やカフェなどのトイレの場合はそれも良し。自分の家では恐ろしい。毎日の習慣として『流さない、蓋を閉めない』が身についてしまい、よそのお宅で水を流さない、蓋を閉めない、手洗いの水を止めない等『始末』のできない子どもになる可能性がある。
(2)私の子どもが友達を連れてきた時に、トイレの水を流さない子が何人もいた。聞くとみんな新しい便利なトイレを使っている子で、『勝手に水が流れるからむしろ自分で流すともったいない』とママに怒られると言っていた。
(3)自分(母)の子(私)や孫がよそのお宅へ遊びに行った時に、そんなことをしているかもしれないと考えただけでもぞっとする。外に遊びに行くたびに大丈夫か心配になるから小言を言わないといけない。お金や便利さを優先するととんでもない子供に育つ!
(4)実際に、伯母(母の姉)が2年前にトイレをリフォームして、便利なトイレにしたが、一緒に温泉に行った時にトイレの水を流していなかった。70年近く身についていた習慣でもたった2年でなくなってしまったんだよ。

私は絶句し、返す言葉もありませんでした。確かに言われてみればその通りです。
もし我が子がお友達の家でそんなことをしても、その家の方が「○○(私の息子)君がトイレの水を流してなかったからよそでは気をつけてね」と私に教えてくれるでしょうか?各家庭のしつけの問題ですから、そのようなことはなかなか伝えにくいものでしょう。
便利なトイレに慣れてしまえば、気をつけていても私にもウッカリということが起こるかもしれません…。子どもならまだしも、大人の私は、恐らく誰からも注意されないままでしょう。

母の話を聞いて、そんなことに気をつけるくらいなら最初からそんな機能はない方がいいと思い、早速変更依頼。幸いトイレは最後の工事なので、『オート開閉』を外したトイレに変更できました(オート洗浄は設定ができることが判明)。
便利な機能がなくなったそのトイレは、便利なトイレより2万7千円安いものでした。
母からお金以上の価値をもらったような気がして、便利で得るもの、失うものを考えさせられた出来事の1つです。
谷崎 由美(たにざき ゆみ)
AFPファイナンシャル・プランナー
ライフワークサポート代表 
公開日: 2018年12月13日 10:00