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出産時に覚えておきたい給付金

出産前後に関わる給付金は、加入している社会保険制度によって違いがあります。また、必要な出費をカバーするためにも、実際に給付されるタイミングを知っておくことは重要です。


・出産育児一時金 (※1)
出産にかかる費用の軽減を目的として、子ども一人当たり一律42万円(※2)が支給される出産育児一時金は、勤務先で健康保険に加入している被保険者本人はもちろん、専業主婦などの被扶養者、そして国民健康保険に加入している自営業者の方、皆さん共通に受け取れます。妊娠85日以上で出産した方 (※3)全員が対象で、給付される時期(※4)は申請してから大体1~2ヶ月ほどです。

・出産手当金
出産手当金は、勤務先で健康保険に加入している被保険者本人だけが受け取れるものです。産前産後休暇中に勤務先からお給料が出ない、または減額される場合が対象となります。これは正社員だけではなく、パートやアルバイトの方でも被保険者であれば対象になります。ただし、専業主婦等のように健康保険の被扶養者や国民健康保険の被保険者は対象外になります。

なお、受け取れる金額はお給料の約2/3の金額で、具体的には次の計算式に当てはめて算出されます。
(支給開始日(※5)以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷30日×2/3

標準報酬月額 (※6)とは、毎月のお給料に各種手当などを含めた総支給額の平均だと思ってください。
例えば、12ヶ月間の標準報酬月額の平均額が20万円だとすると、「20万円÷30日×2/3」で計算した約4,444円が1日当たりの支給額となります。
支給期間は産前42日間 (※7)(出産日含む)から産後56日(※8)なので、この方が予定日通りに出産した場合は合計98日分支給されます。従って、約4,444円×98日分(※9)で約43万円を受け取れます。ただし、勤務先が申請書を協会けんぽや健康保険組合へ提出するのは産後56日を過ぎてからなので、振り込まれるタイミングは一般的に産後2ヶ月半から4ヶ月後になるようです。
なお、産前産後休業中にお給料が支給される場合は、支給額から給料日額が差し引かれます。例えば、会社からの支給額が日額2,000円であれば、(4,444円-2,000円)×98日分となり出産手当金として受け取れる総額は約24万円となります。当然ながら、会社からの支給額が、出産手当金の金額より多い場合、出産手当金を受け取れません。

■傷病手当金(※10)を受給している間、出産手当金は受け取れるのか?
傷病手当金 とは、業務外の病気やケガの療養のため、働けない際の所得補償となるものです。
例えば、業務外のケガで休み、傷病手当金を受け取っている間に出産日が近づいてきたとします。この場合、傷病手当金と出産手当金の両方を同時に受け取れ
ず、出産手当金の支給が優先されます。ただし、傷病手当金と出産手当金に差があり、出産手当金の金額が少なくなるケースでは、その差額が傷病手当金から支給されます。

■妊娠を機に退職する場合は、退職時期に注意
出産を機に退職を考えている場合、これらの給付金はどうなるでしょうか?退職した場合でも(1)健康保険の加入期間が1年以上ある、(2)退職日に出勤していない、(3)退職日が出産手当金の支給期間内に入っている。この条件を満たしている場合、出産手当金は支給されます。例えば、出産予定日より43日以上前に退職した場合だと出産手当金の支給対象から外れますので注意が必要です。なお、出産一時金は、退職日までに継続して1年以上の社会保険加入期間があり、退職日の翌日から6ヶ月以内の出産であれば、退職前の健康保険から支給されます (※11)。

このように出産時に受け取れる給付金は、加入している社会保険制度によって異なります。受け取れる給付金に差が出ますので、働き方を考える時に考慮して頂けたらと思います。

なお、出産後の給付には、雇用保険から支払われる育児休業給付金があります。こちらは、満1歳未満の子の育児のために休業した際に受け取れるため、男性も対象となります。女性は産後56日間出産手当金が支給されるため、その間育児休業給付金は支給されません。出産手当金、出産育児一時金と併せて、知っておきたい制度です。



※1:専業主婦の場合は、夫が加入する健康保険から支給され、家族出産育児一時金という
※2:産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合または在胎週数22週未満の分娩の場合は40.4万円
※3:85日以降であれば、流産、死産でも支給される
※4:受取代理制度の場合
※5:1番最初に給付が支給された日
※6:毎年一回7月に、4~6月の3ヶ月間に支払われた給与の平均額を、標準報酬月額表の等級区分にあてはめて決定するもの
※7:双子などの多子妊娠の場合は98日
※8:もし予定より遅く生まれた場合は、遅くなった日数がプラスになる
※9:産前42日+産後56日
※10:4日以上休んだ場合、4日目以降、最長1年6ヶ月支払われる
※11:夫の扶養に入った場合は夫の加入している健康保険から支給され、国民健康保険に加入した場合は国民健康保険から支給される
番場 裕美(ばんば ひろみ)
AFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 研究員
公開日: 2018年12月20日 10:00