全員

自然災害に見舞われたとき、どのような公的支援が受けられるか

2018年は日本各地で大地震や豪雨など自然災害による被害が相次ぎました。自然現象をなくすことは不可能ですが、災害による経済的な被害は日頃の備えによって減らすことが可能です。災害に対する備えには、行政による「公助」、保険や共済で支えあう「共助」、自分の身は自分で守る「自助」があります。特にあまり知られていない「公助」に関する知識を深めることは大いに役立ちます。

行政による公的支援にはどのようなものがあるか(公助)
被災により家族が亡くなった場合は「災害弔慰金」が支給されます。支給額は生計維持者が死亡の場合は500万円、その他の者の場合は250万円です。重度の障害が残った場合は「災害障害見舞金」が支払われます。支給額は災害弔慰金の半額です。

自宅が全壊するなど、生活基盤に著しい損害を被った場合は「生活再建支援金」が支給されます。住宅の被害程度によって支給される「基礎支援金」と、住宅の再建方法によって支給される「加算支援金」があります。自宅が全壊し、新たに住宅を購入した場合、基礎支援金として100万円、加算支援金として200万円、あわせて300万円が支払われます。

自宅を再取得するための資金を、低金利で借りる制度もあります。「災害援護支援金」は世帯主が負傷したり、住宅や家財に損害を受けたりした場合に、損害の程度によって最高350万円まで融資を受けることができます。融資金利は年3%が原則となっているものの、東日本大震災時は無利子(保証人を立てた場合)になるなど、優遇措置があります。

住宅金融支援機構にも被災者向けの融資制度があります。「災害復興住宅融資」は災害により「全壊」した旨の「り災証明書」を交付されている方が利用できます。新たに住宅を購入する場合、最高で2,620万円まで融資を驚くほどの低金利で受けられます。ちなみに、平成31年1月の融資金利は年0.64%(全期間固定金利)です。

公的支援には他にも、お子様の教育費の援助や減免、税や社会保険料の減免、医療費等の窓口負担の減免、公共料金の特別措置など、様々な制度がありますので、市町村役場や公的機関などに問い合わせてみるとよいでしょう。

火災保険・共済に加入する、内容を見直す(共助)
内閣府によると、東日本大震災で全壊被害にあった住宅の新築費用は平均して約2,500万円ですが、公的支援としての受給額は、義援金もあわせて400万円程度にとどまります。特に住宅再建には大きなお金がかかるため、火災保険・共済などへの加入は大切な備えです。

火災保険・共済は、商品や制度により、補償対象が火災のみであったり、風災や雪災、水災による被害まで対象となっていたりするので、まずは加入している制度の補償内容の確認が大切です。

また、地震、噴火、津波による被害は火災保険・共済では補償されません。これらを補償範囲に含めるためには、地震保険や自然災害共済の付帯が必要です。ただし、地震保険は火災保険金の30~50%までしか加入できないため、建物および家財の火災保険(共済)を、上限までしっかり加入することが、地震対策にもなる点を知っておきましょう。

多くの人は、住宅購入時に火災保障に加入します。しかし、補償内容を熟考せず加入する方や、補償内容を覚えていない方も少なくありません。イザという時にきちんと保険金(共済金)が支払われるよう、この機会に補償内容を確認し、必要に応じて見直しすることが重要です。

防災グッズの準備もお忘れなく(自助)
飲料水や非常食、軍手、常備薬、懐中電灯、携帯ラジオ、予備電池、洗面用具、(乳幼児がいる場合は)哺乳びんや紙おむつなどをあらかじめリュックに入れておき、貴重品と併せて持ち出せるように普段から準備をしておきましょう。
食料や物資を備蓄も有効です。1週間過ごせる程度の飲料水(一人1日3リットル)や食料の備蓄が理想ですが、保管場所と相談しながら、まずは最低3日間過ごせる程度の物資を確保しておきましょう。保存期間の長い食料を多めに買っておき、期限の近いものから消費し、使った分を買い足す方法も効果的。カセットコンロや下着、トイレットペーパー、携帯トイレなども備蓄しておくと、いざというとき役に立ちます。

自然災害はいつ起こるかわかりません。日ごろからの準備(自助や共助)はもちろん、いざという時に役立つ公的な制度(公助)も知っておきましょう。
中山 浩明(なかやま ひろあき)
CFPファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 研究員
公開日: 2019年01月10日 10:00