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平成31年度税制改正大綱 ~個人の税金はこう変わる~

2018年12月に平成31年度税制改正大綱が公表されました。今回の改正は2019年10月に見込まれる消費税の増税に伴い、大幅な駆け込み需要やその反動減を和らげるための策に焦点が置かれています。将来のライフプランを検討するにあたり、私たち個人に影響のある改正について3点を速報ベースでご案内いたします。

1.住宅ローン減税の控除期間が3年間延長
(1)どんな改正か?
消費税率が8%から10%に上がることを受け、住宅ローン減税の控除期間が延長されます。そもそも住宅ローン減税とは、マイホームを新築、増改築等をした場合に、居住開始年から10年間に渡って、所得税額から年末のローン残高の1%を差し引いてくれる制度です。その控除期間が今回の改正により3年延長されて、13年間差し引いてくれるようになります。
対象者は2019年10月(消費税の増税後)から2020年12月31日までに購入し、住み始めた方です。
(2)どれだけ得をするのか?
今回延長された11年目以降の3年間については、次の2つを比べ、少ない額が各年の控除額となります。

(a)住宅ローンの年末残高(4,000万円を限度)×1%
(b)建物購入価格(4,000万円を限度)×2%÷3

この計算式の意味を簡単にいうと、消費税率の引き上げによって生じる負担増に当たる「建物購入価格×2%」分を、住宅ローン減税を3年間延長することにより還元しますよ、という意味です。基本的にはこの住宅ローン減税の拡充のみで、後に消費税率引き上げ分が全てカバーされるため、増税だからといって住宅を買い急ぐ必要はないことがわかります。なお、当初10年間の計算式は従来と同様です。

2.自動車税が恒久的に安くなる
車を持つ人に毎年課される自動車税が、最大で年4,500円を恒久的に減税されます。対象者は消費税の増税が行われる2019年10月以降に新車を購入した方です。

具体的には、
排気量が1000cc以下の最も小さなクラスの車で税額が年29,500円から25,000円、
排気量が1500ccの場合、年34,500円から30,500円、
2000ccの場合、年39,500円から36,000円
2500ccの場合、年45,000円から43,500円にそれぞれ引き下げられます。

なお、「軽自動車税」については、年10,800円のままです。

一方、購入時に課される自動車取得税の廃止に代わって、燃費性能に応じて課される「環境性能割」が導入されます。燃費課税とも呼ばれ、燃費性能のよい車ほど税負担が軽くなる仕組みです。燃費性能により購入額の0~3%の税負担となりますが、消費税増税後1年間だけ1%減税が予定されています。ただし現行のエコカー減税と比べ、対象車種がEVやプラグインハイブリッド車などに絞られるため、かえって増税となる車種も出てきます。減税ありきのクルマ選びは避けるべきでしょう。

3.教育資金、結婚・子育て資金非課税制度の延長
2019年3月31日に適用期限を迎える「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」と「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」が共に2021年3月31日まで2年延長されます。
一方で、教育資金特例については(1)受贈者の所得要件(1,000万円)が追加され、(2)23歳以上の者の教育資金の範囲が限定されました。また、結婚・子育て資金特例も受贈者の所得要件(1,000万円)が追加されています。すなわち、高所得者への贈与については適用できなくなります。大多数の一般勤労者やお子さまへの影響はありませんが、制度自体は縮小傾向であることが伺えます。

税制改正関連法案は、例年のスケジュールでは、3月に成立・公布。同年4月1日に施行されています。今回の改正は全体として減税色が強い内容です。しかしながら減税とは‘おまけ’みたいなもの。まずはそもそも何のために住宅や車が必要なのかを検討したうえで、新たな制度を有効に活用していきましょう。
宮下 貴博(みやした たかひろ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 主任研究員
公開日: 2019年01月24日 10:00