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2019年6月以降の規制法成立「ふるさと納税」は寄付か節約か?

2019年3月27日、ふるさと納税における過度な返礼品競争を防ぐ改正地方税法が参院本会議で可決、成立しました。

今回の法規制のポイントは、次の通り。
・返礼品は「調達費が寄付額の30%以下の地場産品」に限定し、自治体に「寄付金募集の適正な実施」を要請。
・2019年5月中旬、総務省はルールを遵守すると見込んだ自治体のみ制度の対象に指定。指定の判断は、2018年11月以降の返済品の送付状況などを考慮した上で行われる。
・2019年6月1日以降、指定から外れた自治体への寄付は、同制度に基づく税優遇を受けられない。

要するに、全国の地域活性化を目的として2008年度から創設されたふるさと納税ですが、今回の改正で、対象となる自治体の範囲が変更され、この本来の趣旨を逸脱するような過度の返礼品を送付している自治体は、総務大臣の判断で優遇の対象から外すことができるようになったわけです。

そもそも、ふるさと納税とは、個人住民税の寄附金税制が拡充されたもの。出身地や応援したい自治体などに2,000円を超える寄付をした場合、超えた分が所得税と住民税から控除される制度です。
おもに、首都圏等で働く地方出身者(まるで筆者のような!)の税金を、ご恩返し的な意味で地方に還元することを目的としています。現在の住所地だけでなく、個人が選んだ‘ふるさと’に恣意的に寄付(納税)できる点は、これまでにないユニークな考え方だと感心したことを覚えています。

この制度のメリットは、(1)気軽に好きな自治体に寄付できる、(2)自分の税金が安くなる、(3)実質2,000円でお礼に特産品がもらえるといった3つが挙げられます。
本来の目的からすると、3つのメリットの比重は、(1)>(2)>(3)のはずなのですが、創設から10年以上が経過した現状では、(3)>(2)>(1)のような印象が否めません。
当初、感謝のしるし程度だった返礼品が、自治体同士の競争が過熱化した結果、「ふるさと納税=豪華な特産品をゲットできるオトクな制度」という位置づけになってしまい、それが、冒頭の改正へつながったといえます。

もともと、返礼品については、総務省の通達によって「寄付額の3割まで」という暗黙のルールがありました。
ところが、豪華な返礼品を用意しなければ、寄付者が集まらず、税収が増えないわけですから自治体としては必死にもなるでしょう。
それに、魅力的な地場産品がある自治体ばかりではありません。まったく地元とは関係のない返礼品が出てくることも、早い段階から、想像できたと思うのですが…。

しかし、返礼品規制に躍起になっている総務省によって、昨年(2018年)秋以降、返礼品調査がひんぱんに行われ、商品券や旅行券、食事券、パソコン、家電、アクセサリー、時計といった換金性や資産性が高い返礼品の多くが見直しを余儀なくされてきました。
それでも、一部の自治体では、あえて還元率の高い返礼品を継続しているところもあったのです。
それが、とうとう総務省の逆鱗に触れたようで、今年3月、ふるさと納税の寄付金が多額な自治体に対して、国から自治体に年2回交付される特別交付税が大幅に減額されるという報道もありました。特別交付税とは、地方公共団体間の財政不均衡を是正するために、国から地方公共団体に交付される資金のひとつ。これが減額されるのは、「ふるさと納税で税収があるんだから、交付税に頼らなくても財政運営できるだろう」というのが国の言い分のようです。

国と自治体とのはざまで、困惑するのは消費者ばかり。とはいえ、6月の規制がスタートするまでの駆け込み需要を見込んだ自治体や、国の監視の目を逃れ、3割規制を超えた高還元率の返礼品を実施している自治体(‘闇ふるさと納税’などというらしい)を探し求めて、少しでもおトクに恩恵を享受したい人は少なくないでしょう。

ちなみに、筆者はふるさと納税を利用していません。もちろん、オトク度は十分承知の上ですが、豪華な返礼品にまったく興味がないこと。ポータルサイト等の膨大な情報を閲覧する時間がないこと。そして、何となく返礼品目当てで寄付していると思われたくないことがおもな理由です。ただ、ふるさと納税が地方の活性化に貢献していることも確か。例年、通常の寄付金控除は利用しているので、もう少しみなさんの熱が冷めた頃にふるさと納税も検討しようかなと思っています。
黒田 尚子(くろだ なおこ)
CFP®認定者
1級ファイナンシャルプランニング技能士消費生活専門相談員資格
消費生活専門相談員資格
CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター
公開日: 2019年04月11日 10:00