全員

住宅ローン減税の効用と注意点について

2019年10月1日の消費税率の引き上げに伴い、住宅ローン減税の拡充措置が講じられることになりました。これにより、控除期間が3年間延長され、消費税2%増税相当分の負担が、住宅ローン減税という形で還元されることになります。

<住宅ローン減税はどう変わるか>
2019年10月に消費増税(8%→10%)が実施される予定です。今回の改正では住宅購入時に何パーセントの税率が適用されたのかによって異なる減税期間が設定されています。消費税8%が適用される場合、年末ローン残高の1%(年間最大40万円)の減税が10年間受けられますが、10%が適用された住宅を購入した場合は減税期間が3年間延長※1されます。11年目以降は年末ローン残高の1%または建物購入価格(上限4,000万円※2)の2%を3年で割った額のいずれか低い方が適用されます。
10%の消費税率適用後に住宅購入を予定されている方にとっては今回の制度改正はうれしい話ですが、住宅ローン減税を理由に住宅を購入するのは危険です。

<住宅ローン減税の効果は>
消費税8%が適用される住宅を購入し住宅ローンを組んだとします。年末ローン残高2,000万円だとするとその1%(すなわち20万円)がその年の所得税額から差し引かれます。会社員等の給与所得者で年収500万円(課税所得195万円※3)の場合、所得税額は約9.75万円ですが、所得税額から控除しきれなかった額は翌年の住民税から控除※4できるので、所得税と住民税あわせて20万円の減税効果を受けられます。
ただし、翌年の年末ローン残高は2,000万円よりは少なくなっていますから減税効果も小さくなっていきます。返済期間30年、ローン金利1.50%※5のケースだと10年間の減税効果は先ほどの条件で計算すると約175万円。決して20万円×10年間=200万円が減税されるわけではありません。ましてや年間最大40万円×10年間=400万円の減税を受けるためには10年後にもローン残高が4,000万円以上あることが必要ですから、当初借入額が過大になってしまいます。中には「最大で400万円戻ってくるのだからローンを組んででも住宅を建てた方が得だ」といったセールストークも横行していますので注意してください。


<繰り上げ返済のタイミング>
よく皆さんから聞かれるのは「繰り上げ返済を検討しているがすぐに実行した方が得か、それとも住宅ローン減税期間が終わってから実行したほうが得か」という疑問です。状況による違いはあるものの一般的には今すぐ繰り上げ返済を実行したほうが有利になることが多いでしょう。
先ほどの事例(給与所得者で年収500万円、返済期間30年、ローン金利1.50%、年末ローン残高2,000万円)で(1)今すぐ繰り上げ返済した場合、(2)10年後に繰り上げ返済した場合の利息軽減効果をみてみましょう。(1)は約53.7万円、(2)は約34.2万円となり、(1)のほうが約19.4万円も利息の支払い総額が少なくなります。一方、(1)は年末ローン残高が100万円少なくなるため、減税効果は100万円の10%(すなわち10万円)少なくなります。トータルでは(1)のほうが約9.4万円(19.4万円-10万円)節約効果は大きくなります。
ただし、借入総額や所得金額などによって効果は違ってきますので、「住宅ローン減税期間が終わってから繰り上げ返済したほうが得」と決めつけず、どちらが有利かを検証したうえで実行するのがよいでしょう。

<医療費控除を申請するときの注意>
住宅ローン減税の適用を受けているときは、医療費控除の申請にも注意が必要です。例えば住宅ローン減税を適用した結果、所得税額が0円となった方が医療費控除を申請したところで、1円たりともお金が戻ってこないからです。
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合、その支払った医療費が10万円※6を超えるときは、その超えた金額が所得から控除される制度です。医療費控除の適用には確定申告が必要ですが、誰が確定申告をすれば得をするのかを考えます。世帯主が住宅ローン減税の適用を受けているのであれば、一定以上所得のある配偶者が適用を受けたほうが得になるケースがあります。

このように住宅購入時の負担総額は、購入費や諸経費、ローン金利だけではなく、税制を正しく知ることでも違ってきます。制度を正しく理解し広い視野で資金計画を考えることが大切です。

※1 2019年10月から2020年12月末までに入居すること。
※2 認定住宅等の場合は上限5,000万円
※3 基礎控除38万円、配偶者控除38万円、社会保険料控除75万円で計算
※4 ただし課税所得金額の7%(上限136,500円)まで
※5 全期間固定、元利均等返済。東京都内のフラット35の平均金利(手数料定額タイプ)2019年4月1日現在
※6 その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
中山 浩明(なかやま ひろあき)
CFPファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 研究員
公開日: 2019年04月25日 10:00