全員

若い世代にも関係する障害年金とは

年金という言葉には老後に受給するだけのイメージがありますが、現役世代のうちに受給する可能性がある年金として、障害年金と遺族年金があります。今回は障害年金についてみていきます。

障害年金とは
障害年金は、公的年金の加入者が病気やケガによって所定の障害状態になった場合に受給するもので、国民年金の被保険者であれば障害基礎年金、厚生年金の被保険者であれば条件に応じて障害基礎年金と障害厚生年金の両方が受給できます。
受給対象となるのは、障害基礎年金が1級または2級の障害、障害厚生年金は1級、2級に加えて3級の障害に該当した場合で、3級障害に満たない場合でも「障害手当金」の対象となる場合があります。なお、障害年金の等級は国民年金法・厚生年金法政令別表「障害認定基準」で定められており、「身体障害者障害等級表」によって定められる「身体障害者手帳」の等級とは異なる点には注意が必要です。

障害年金を受給するための3つの要件
1.公的年金の加入期間に初診日(※1)があること
2.障害認定日に一定の障害状態であること
3.初診日の前日において次のいずれかの要件を満たしていること(※2)
 a.初診日に65歳未満で、初診日の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
 b.初診日の前々月までにおいて、公的年金加入期間の2/3以上保険料の納付または免除されていること

いくらもらえるの?
では、受給できる金額を見ておきましょう。障害基礎年金は、老齢基礎年金の満額と同じ「年額780,100円」が基準となり、2級障害の受給額は基準額そのままで、1級障害の受給額は基準額を1.25倍した「975,125円」となります。さらに、18歳の年度末までの子がいる場合には、子の加算額があります。
 
次に障害厚生年金です。こちらも2級障害が基準で、老齢厚生年金と同じ計算式で算出した年金額が受給額となり、1級障害の受給額は2級障害の受給額を1.25倍した金額となります。障害厚生年金には子の加算がない一方、生計を維持している配偶者がいる場合には、配偶者加給年金として224,500円が加算されます。
なお、老齢厚生年金を算出する正式な計算式は長いため、次の簡易式で近似値を求めることができます。
「現時点でのおよその月給 × 0.96 × 5.481/1000 × 被保険者月数 × 0.999」
なお、被保険者月数が300月に満たない場合は、300月として計算できます。例えば、現時点での月給(諸手当を含み、税金や社会保険料が差し引かれる前)を30万円として計算すると、約47万円 (※3)になります。

障害年金と傷病手当金は同時に支給される?
病気やケガで働けなくなった場合、加入している健康保険の傷病手当金の支給対象となるケースがあります。

この2つの受給権が同時に発生する場合、双方から受給できますが、受給額が大きくなりすぎないよう金額が調整されます。これを併給調整(※4)といいます。併給調整が行われると障害年金を優先して受給し、傷病手当金が一部または全額支給停止となるのです。受給総額は傷病手当金か、障害基礎年金と障害厚生年金の合計を360で割った額のいずれか高い方になります。

なお、傷病手当金は病気やケガが治ったかどうかにかかわらず開始から1年6ヵ月経つと支給停止となりますが、障害年金は所定の障害状態が続く限り、生涯受給する事が出来ます。

なお、障害年金は申請から実際の入金まで半年程かかるケースもあるようです。併給調整される場合でも、傷病手当金の受給後に障害年金の申請をするのではなく、傷病手当金受給終了半年前くらいには申請しておくべきでしょう。

あまり知られていない障害年金ですが、年齢とは関係なく生活を守ってくれる大切な制度です。特に将来の老齢年金受給に不安を持つ若年者が、20歳になって国民年金保険料を未納にしていると、こうした保障をすべて放棄することになるため、皆さんのお子さんが学生でも20歳になったら保険料をきちんと払うか、学生の特例の届け出を出すことを忘れないようにしましょう。

※1 障害にきっかけとなった病気やケガで初めて医師または歯科医師の診療を受けた日
※2 20歳前に初診日がある人については、そもそも国民年金保険料を払うことが出来ないのでこの要件は問われない
※3 300,000円×0.96×5.481/1,000×300月×0.999
※4 別傷病の場合と、障害基礎年金のみの場合は併給調整されず全額受給できる
番場 裕美(ばんば ひろみ)
AFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 研究員
公開日: 2019年06月27日 10:00