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活発化する生保業界の「インシュアテック」への取り組み
そんな中、生保各社では、貯蓄性商品から保障性商品へのシフトが進み、新商品の開発や販売に注力しています。今回は、そのうちの一つである「インシュアテック」の取り組みについてご紹介しましょう。
■「インシュアテック」とは?
数年前から「フィンテック(FinTech)」という言葉を目にするようになりました。何だか難しいもののように感じますが、IT技術とビッグデータの活用によって可能となった新しい金融サービスのことです。家計簿アプリやスマートフォンによる決済など、おそらく、多くの人が使っているのではないでしょうか?
矢野経済研究所の調査によると、「フィンテック元年」と言われた2015年以降、国内のフィンテック市場は拡大を続け、2021年度には808億円に達すると予測されています。
保険業界でも、保険とITを融合させたサービスを「インシュアテック(InsurTech)」と称し、従来は難しかった保険商品の開発が可能になるなど、取り組みが活発化しています。
すでに損保業界では、自動車運転の仕方の違いによって保険料やサービスが変動する「テレマティクス保険」の導入がスタートしていますが、安全運転をすればするほど保険料が安くなるわけですから、消費者のメリットは大きいでしょう。
■ビッグデータの活用で、健康な人ほど保険料が安くなる!
そして生保業界でも、医療・第三分野商品を中心に医療ビッグデータを解析して、将来的に健康リスクを細分化し、保険料に反映させるような商品が登場しています。
ネオファースト生命では、2016年12月1日より、「健康年齢」によって保険料を算出する「カラダ革命」(無解約返戻金型7大生活習慣病入院一時給付保険)が販売されました。この保険は、日本医療データセンターが保有している約160万人の健診データ等の医療情報をもとに、健康年齢を判定。更新時の保険料を決めるという仕組みです。なお、同センターのデータを活用した商品は、ノーリツ鋼機グループが設立した健康年齢少額短期保険会社でも、「健康年齢連動型医療保険」として2016年6月17日から販売されています。
また、住友生命保険でも、ソフトバンクやディスカバリー社(ウエルネスプログラムの分野で世界的な企業)の三社共同で、健康状態によって保険料が割安になる「健康増進保険」の開発を進めていると2016年7月に発表。2018年の商品化を目指すとしています。この商品は、運動や食生活など健康への取り組みを点数化し、高評価だと翌年以降の保険料が安くなる仕組みで、通常より3割程度安くなるとのこと。
ほかにも、日本生命や明治安田生命、第一生命メットライフ生命も情報系企業等と提携を結び、インシュアテックの研究開発を進めているようです。
■アプリで疾病予防や健康管理のサービスを提供
一方、スマートフォンアプリを活用したサービスの提供も進んでいます。太陽生命では、認知症予防をサポートする「認知症予防サプリ」を同社の「ひまわり認知症治療保険」等の被保険者に提供。損保ジャパン日本興亜ひまわり生命では、健康関連サービスとして無料でダウンロードできる健康キュレーションメディア「Linkx siru(リンククロス シル)」の提供が始まっています。
今や、生保会社は第三分野の保障を提供する一方で、被保険者の疾病予防や健康管理・増進を考える時代なのでしょう。FPとしては、これらの動きが消費者の健康へのインセンティブにつながれば良いと感じつつも、逆に、健康にあまり自信がない、あるいは経済的余裕がなく健康に対して時間やお金をかけられない人に対して、どうアドバイスしていくかが重要だと考えています。
黒田 尚子(くろだ なおこ)
CFP®認定者
1級ファイナンシャルプランニング技能士
消費生活専門相談員資格
CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター