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老後の年金はもらえるの?いくらもらえるの?
老齢年金には誰もがもらえる(A)老齢基礎年金と、会社員や公務員、団体職員がもらえる(B)老齢厚生年金の2つがあり、(A)老齢基礎年金では原則として65歳から年額779,300円(平成29年度)を受け取れます。ただし、この金額が受け取れるのは国民年金保険料(以下、保険料)を40年間一度も欠かさず(※1)に納めた方に限られ、保険料納付済期間が短い方はそれに比例して受け取れる年金額も少なくなります。例えば、保険料を30年間しか納めなかった方は、支給額も40分の30の584,500円となります。
さらに、(A)老齢基礎年金には「保険料を25年以上(※2)納めないともらえない」というルールがあります。例えば、40年の半分の期間である20年間しか納めなかった方がいたとしましょう。期間が半分ですから半額の40万円くらいはもらえそうと思いきや、25年を下回っているため、現状では1円たりとも受け取れないのです。
以上から、先の2つの質問の答えを考えてみましょう。まず、①は保険料を25年以上納めたかどうかで決まり、②は満額の779,300円を40年で割り、実際の保険料納付済期間をかければ求められます。
ちなみに、会社員、公務員、団体職員の国民年金保険料は、厚生年金保険料に含まれる形で給料から天引きされています。天引き項目に「国民年金保険料」がないため「未納ではないか?」と心配される方がいますが、厚生年金に加入している方は納付扱いになっているので心配いりません(※3)。
次に、会社員、公務員、団体職員がもらえる(B)老齢厚生年金ですが、受給要件は「老齢基礎年金の受給要件を満たしていること」で、保険料を25年以上納めていないと受け取れない点は老齢基礎年金と同じです。老齢厚生年金も原則65歳から受け取れ、支給額の概算は次の式で求められます。
退職時点でのおよその月給 × 0.96 × 5.481/1000 × 被保険者月数 × 0.999
「およその月給」には住宅手当や通勤手当、家族手当といった各種手当を含み、税金や社会保険料が差し引かれる前の金額をあてはめます。お給与明細の中では通常「総支給額」と書かれる一番大きい金額です。また、「被保険者月数」は厚生年金の保険料納付済期間(※4)すべてです。例えば、勤続40年(被保険者月数480月)、退職時点での月給をあえて大きめの50万円というケースで計算してみると、概算額は年額1,261,600円 です。
なお、生年月日によっては65歳よりも手前に「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れる場合がありますが、現役世代で受給できる方は限られるため今回は省略します。また、厚生年金の加入期間が20年以上ある方に一定の要件を満たす65歳未満の配偶者がいる場合は、家族手当に相当する(C)加給年金の389,800円(年額)が、配偶者が65歳(※5)になるまでもらえます。
ここまでをまとめてみましょう。例えば、退職時点の月給が50万円、勤続年数40年(480月)の会社員の方に、2歳年下の配偶者がいたとします。この方が65歳からもらえる老齢年金は以下の通りです。
(A)老齢基礎年金 年額779,300円(終身)
(B)老齢厚生年金 年額1,261,600円(終身)
(C)加給年金 年額389,800円(2年間)
なお、老後にもらえる年金は課税対象ですが、給付された年金額から様々な控除を差し引き、残った儲け(所得)にだけ税金が課されます。例えば、退職時の月給が50万円という方の年金額は合計240万円程度でしたが、公的年金等控除と基礎控除で最低でも158万円(※6)が控除されます。配偶者や扶養親族がいる方は、所得控除としてさらに数十万円を差し引くことができるため、そもそも税金がかからないという方も多くいます。また、仮に儲けが出ても、ほとんどの方は儲けの金額×5%の税金が課されるにすぎず、住民税と併せても大きな負担にはなりません。
年金額の計算は複雑と思われがちですが、原則的な部分はシンプルで簡単に退職後の収入額の概算を把握できます。あとは、キャッシュフロー表を使い、この年金額で生活ができるかできないかを確認しましょう。その上で、必要があれば生活費の見直しや退職後も継続して働き続けることを考えるとよいでしょう。
※1 保険料の滞納や免除された期間がない
※2 平成29年8月1日からは10年以上に変更となる
※3 ただし、20~60歳までの40年間に限られる
※3 公務員経験のある方は共済組合の加入期間も合算する
※4 100円未満を四捨五入
※5 配偶者が65歳になると加給年金は停止され、代わりに「振替加算」という名目でわずかな金額が上乗せされて終身受け取れる
※6 65歳以上の場合
滝沢 翔吾(たきざわ しょうご)
AFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 研究員