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キャッシュレス決済を利用する効果と注意点

10月1日の消費税率アップ後に実施されている「キャッシュレス・ポイント還元事業」や、○○Payと呼ばれる新しいサービスによる大幅なキャッシュバックキャンペーン等もあり、キャッシュレス決済への関心が高まっています。一方で、一気に増えたキャッシュレス決済方法に対する戸惑いや、セキュリティに対する不安もあり、利用に躊躇される方も多いようです。

■消費の2割はクレジットカード
日本におけるキャッシュレス決済は、1960年に丸井や高島屋で発行された「お買い物カード」が始まりだと言われています。クレジットカードが初めて発行されたのは1961年で、
JCBカードとダイナースカードでした。
その後様々な形で進化を遂げてきたクレジットカードですが、一般社団法人日本クレジット協会によると、2018年3月末時点の発行枚数は2億7,827万枚、ショッピングにおける信用供与額(1年間の利用額)は、58兆3,711億円に達する規模になっています。
日本の家計消費額は、年間約295兆円(2017年)ですから、クレジットカードでの支払い比率は約19.7%となります。経済産業省が2018 年 4 月 11 日に公表した「キャッシュレス・ビジョン」では、大阪万博が開催される2025 年までに、キャッシュレス決済比率を40%とすることが目標に掲げられていますが、キャッシュレス決済の9割を占めるクレジットカード以外の普及が鍵となりそうです。
ちなみに、カード先進国といわれる韓国におけるキャッシュレス比率は約9割に及びます。韓国で普及が広がった背景には、クレジットカード利用額の20%を課税所得から控除したり、利用控えに記載された番号を対象にした宝くじ制度を導入したりという、政府による様々なカード利用促進策の打ち出しがあったようです。
日本においても、キャッシュレス・ポイント還元事業や各社のキャンペーンによって関心が高まっているように、こうした政策やキャンペーンの実施は、普及の後押しとなっています。

■キャッシュレス決済の種類
キャッシュレス決済は大きく次の3つのグループに分けられています。

(1)カード系(クレジット/デビット/プリペイド)
(2)電子マネー系(交通系・流通系のICカード等)
(3)QRコード決済系(○○Payと称されるもの)

この中で、最近話題になることが多いのは(3)のQRコード決済系でしょう。
QRコード決済と聞くと、何やらややこしく感じる人が多いようですが、仕組み自体はいたって簡単です。必要なアプリをダウンロードした上で、支払いの際にQRコードやバーコードを表示してお店の人に読み取ってもらうか、お店が提示したQRコードを自分のスマホで読み取るかのいずれかの操作を行うだけ。あらかじめチャージしたお金で支払うケースや、銀行口座から直接引き落とされるケース、クレジット払いとして後日まとめて口座から引き落とされるケースもあります。

■利用した際の効果と注意点
キャッシュレスの利点は、物理的に身が軽くなることだけではなく、支払時間の短縮や現金引き出しの手間が省けることです。小銭入れ等を持つ必要がない点ではこれまでの電子マネー等も同じですが、消費者として無視できないのはQRコード決済を手掛ける民間企業が行っている多くの還元キャンペーンでしょう。
筆者が、あるQRコード決済を1ヶ月間使用した結果の数字を集計したところ、決済合計額(支払合計額)40,065円に対して、還元された合計金額は1,952円。還元率4.87%ですから、消費税アップ分を十分にカバーしている計算になります。この中には業者独自のキャンペーンによる還元等も含まれるため、今後も継続して4~5%の還元が実現するわけではないものの、現時点では一定の支出軽減効果があるのは事実です。
一方で、財布からお金が出ていかないことで、ついつい使い過ぎてしまうのは大きな注意点です。その点では、クレジットによる引落ではなく、1ヶ月当たりのチャージ額を限定するなど、自分なりに利用を制限する仕組みを持つべきです。
大手コンビニチェーンが手掛けた決済サービスで不正利用が発生したことや、大々的なキャンペーンによる利用の集中でシステムトラブルが発生するなど、負の面はあるものの、自分が望まなくても時代は変化していきます。「よくわからないから何となく不安」という印象だけではなく、まずは身近なお店で利用できるキャッシュレス決済から始めてみてはいかがでしょうか。
栗本 大介(くりもと だいすけ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 主任研究員
株式会社エフピーオアシス 代表取締役

 
公開日: 2019年10月24日 10:00