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サブスクリプションサービスという選択

近年、サブスクリプションという言葉をよく耳にするようになりました。定額課金サービスの意味で使われていますが、英語のサブスクリプションには「予約購読」や「年間購読」の意味があり、サブスクリプションサービスとは一定の料金を支払うことで一定期間サービスを受けられる仕組みです。たとえば、Amazonプライムなどで、月額500円を支払うことでさまざまな特典を得られたり、一定の映画や音楽を無制限で楽しむことができるのもサブスクリプションサービスのひとつです。

所有から利用する時代
サブスクリプションサービス(以下、サブスクと省略)は、さまざまなジャンルに及んでいます。2013年にアドビシステムズは製品を「箱入りソフトウェア」からサブスクリプション方式での販売に転換し、消費者は高価なソフトウェアをわずかな月額利用料のみで使用が可能になりました。また、私たちが利用している映画やドラマなどの動画配信、音楽の聴き放題などは、そのほとんどがサブスクです。他にもマンガや雑誌の読み放題、ゲーム、化粧品や高級ブランド品、アクセサリー、洋服、コンタクトレンズ、家電製品、ラーメンもお酒もサブスクがあります。最近では車や住宅も購入するのではなくサブスクを利用する人が増え、所有する時代から利用する時代へと変化しています。

総額に注意
しかし、音楽や動画配信など月額1,000円程度であっても1年間で1.2万円、10年で12万円、30年間では36万円を支払うことになります。これを1契約だけでなく、たとえば5つの違うサブスク契約をしていると30年間で180万円を音楽や動画などの視聴費用として支払うことになります。したがって月に2~3本程度の映画しか見ないような場合はその都度レンタルや購入をしたほうが安く済みます。

自動車の場合のメリットとデメリット
自動車のサブスクでは自動車を購入する費用も税金も不要です。保有コスト(保険料、税金、車検、修理費用)も基本的には不要ですから、月額利用料のみで自動車を利用できます。契約期間はレンタカーやカーシェアが数日あるいは数時間であるのに対し、既存のカーリースは3年以上のところが多く、場合によっては5年や7年などの期間を設定します。それに対してサブスクでは数ヶ月から期間を設定できるため、カーリースよりも気軽といえるかもしれません。またサブスクやカーリースはレンタカーやカーシェアのように借りるというより所有に近い状態となり多少のドレスアップも可能で、ナンバープレートも「わ」や「れ」ではなくなるため、デートなどの利用に抵抗のあった方にもお勧めです。ただし、メリットばかりではなく、自動車は自己保管する必要があり、自宅に駐車スペースがない場合や駐車場の賃料が高い地域では保管コストも視野に入れておく必要があります。

住まい方にも広がるサブスク
住宅のサブスクも徐々に増えています。好きな地域や場所で生活しながら仕事をしたいという多拠点居住を理想とする若年層が増えているといいます。費用は月額制や年額制、単独入居やシェアハウスなどにより異なり、月額4万円程度から25万円近いものまで幅広くサービスが提供されています。

利用者はさまざまな地域で生活することにより、多様なコミュニティーに参加できるメリットがあり、地域では若者が多く訪れることにより地域の活性化につながるなどのメリットがあります。また、自然災害の多い昨今、住宅を所有することをリスクと考える人も増えており、住宅のサブスクに対するニーズは広がりつつあると同時に、今後さらに深刻化するといわれる住宅の空き家問題の解決にもつながるかもしれないと期待されています。

サブスクの特長はイニシャルコストが不要もしくは少額で、かかる費用はほぼランニングコストのみであることです。これがメリットになるのかデメリットになるのかは利用するサービスや利用する人によって異なりますが、経済的な損得よりもライフスタイルによる選択も重視される昨今、自分に合ったサービスを選択するための比較が必要です。
市川 貴博(いちかわ たかひろ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 主任研究員
日本FP協会静岡支部 幹事
公開日: 2019年12月05日 10:00