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個人年金保険の「あの図解」への違和感
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この図解は、「契約から支給受取開始までは保険料を積み立てる」および「年金受取開始以降は毎年一定額の年金を受け取る」ことを一目で表せるため、個人年金保険を販売する側にとっては使い勝手の良いものです。しかし、この図解は、フロー(お金の流れ)とストック(お金の貯蔵量)を意図的に混同しているため、商品説明の際に誤解を招く恐れがあります。私もかつて、販売推進の現場で下記のようなやりとりをした経験があります。
<当時の会話(その1)>
【お客さま】ごめんください。
【私】いらっしゃいませ。
【お客さま】個人年金保険について話を聞きたいのですが。
【私】かしこまりました。この個人年金保険は(中略)以上の通り、ご契約から年金受取開始まで毎月一定の掛金額を積み立て、60歳から一定の年金額を受け取ることができるしくみです(よし、完璧な説明や!)。
【お客さま】ちょっと待ってください。
【私】はい?
【お客さま】「掛金額は毎月一定」と言いますが、この図解だと、契約してから掛金額が年々高くなっているじゃないですか。これじゃあ、若いうちは良くても50代以降は掛金負担に耐えられませんよ。ははあ、さては今だけ掛金を低く見せておいて、後で掛金を釣り上げようという魂胆ですね!? やっぱり契約しません!(ガタッ)
【私】え、ええ・・・!?(汗)
<当時の会話(その2)>
【お客さま】ごめんください。
【私】いらっしゃいませ。
【お客さま】個人年金保険についてもう一度話を聞きたいのですが。
【私】かしこまりました。この個人年金保険は(中略)以上の通り、ご契約から年金受取開始まで積立金を貯めていき、60歳から取り崩すしくみです(よし、今度は図解に即した完璧な説明や!)。
【お客さま】ちょっと待ってください。
【私】はい?
【お客さま】「お金を積み立てていき」と言いますが、この図解だと、年金受取開始時に積立金がガクンと半分以上も減っているじゃないですか。これじゃあ、返戻率にすると50%以下ですよ。ははあ、さては忘れた頃になってから没収しようという魂胆ですね!? やっぱり契約しません、フン!(ガタッ)
【私】え、ええ・・・!?(涙目)
上記のような認識の相違が生じた理由は、保険料払込期間の図解がストックを表しているのに対し、年金受取期間の図解がフローを表していることに原因があります。個人年金保険に限らず年金制度を説明する際は、フローとストックは本来厳密に区分する必要があります。
とはいえ、個人年金保険のしくみを一目で表すことのできる図解が、現状では他に選択肢が無いのもまた事実です。月並みな結論になりますが、図解だけに頼らず口頭で上手く補足して説明してみせるのが、業界人あるいは専門家としての腕の見せどころなのでしょう。
最後に余談ですが、保険の世界では、貯蓄と保険の違いを表す格言として「貯金は三角、保険は四角」というフレーズが良く用いられます。ただし、この場合、貯金を表す三角形はストックを意味しているものの、保険を表す四角形は保障額(保険金額)であって、ストックでもフローでもないことに留意する必要があります。
谷内 陽一(たにうち よういち)
社会保険労務士
証券アナリスト(CMA)
1級DCプランナー、DCアドバイザー