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高齢者受難の年は続く?70歳以上の高額療養費制度の見直し


今年も3月末に、平成29年度予算と税制関連法が成立しました。今回の改正は、国の支援の重点が、高齢者から子どもや女性に移行した点が特徴的で、高齢者の増加で、否が応でも増えざるを得ない社会保障費をいかに抑えるかは、ここ数年来の最大の課題です。
今回の改正でも、高齢者の負担増となる見直しが盛り込まれました。
 
2段階で行われる70歳以上の高額療養費の見直し
その一つが、70歳以上の高齢者に対する「高額療養費」の見直しです。
これまで、住民税課税世帯で、「年収370万円未満」の低所得世帯の一ヵ月あたりの自己負担限度額(以下、自己負担)の上限は12,000円でした。それが、今年の平成29年8月からは14,000円、さらに2018年8月からは18,000円までに引き上げられます。
ただし、在宅での長期療養のケースなどを配慮して、新たに年間の上限額144,000円が設けられることになりました。厚生労働省によると、この世帯の対象者は1,243万人と他の所得区分の中で最も多くなっています。
 さらに影響大なのが、「年収370万円以上」のいわゆる現役並み所得の世帯です。現行で1区分だったものが、3つに分割され、たとえば、「年収370万円以上770万円未満」世帯は、44,400円から、今年8月には月57,600円、来年8月には月87,430円と約2倍もアップします。
 要するに、70歳未満と同じ所得区分に変更になったというわけです。最終的な上限額は、70歳未満の現行を若干上回る金額が設定されます。
 なお、世帯によっては、70代前半の両親が50代の長男夫婦と同居しているなど、それぞれ混在しているケースがあります。その場合、まず70~74歳の自己負担の合算額に限度額を適用した後、残った負担額と70歳未満の自己負担の合算額を合計した額に限度額を適用するしくみになります(75歳以上については後期高齢者医療制度の対象)。
 いずれにせよ、すでに限度額適用認定証を持っている場合、区分が変更になりますので、再度手続きをお忘れなく。
 
平成29年8月から高額介護サービス費も見直し
さらに高額療養費の介護版ともいうべき、「高額介護サービス費」の見直しも、今年8月から行われ、「一般」区分の自己負担がアップします。
高額介護サービス費は、利用者世帯の所得によって4段階に分けられています。
最も負担が大きい「現役並み所得者(世帯収入520万円以上等)」は月額44,400円、低い方では「住民税非課税世帯等」が月額24,600円、さらに「年金収入80万円以下等」が月額15,000円で、それ以外は「一般」区分で、現行では月額37,200円です。
 今回見直しされるのは、「一般」区分の自己負担で、「現役並み所得者」と同じく44,400円に引き上げられる予定です。
 ただし、高齢者世帯の過大な負担とならないために、年間の負担総額が現行の自己負担を超えないよう、446,400円(37,200万円×12ヵ月)の年間上限額を設けるしくみも導入されます。
対象は、公的介護保険の1割負担者のみの世帯(年金収入280万円未満等)で、3年間の時限措置です。そして、高額療養費および高額介護サービス費が見直しされたわけですから、「高額介護合算療養費」の所得区分も今年8月から変更されますので、ご注意ください。
 
このほかにも医療・介護制度の見直しは続く
介護サービスの利用者負担の在り方の見直しはまだあります。現在、国会に提出されている介護保険法等の改正案が成立すると、平成30年8月から65歳以上で高所得の介護保険利用者の自己負担が3割に引き上げられます(ただし、月額44,400円の負担上限あり)。
いわゆる「現役並み所得者」に対する自己負担の引上げは、2年前の平成27年8月に1割から2割に引き上げられたばかりです。
他の改正もそうですが、医療・介護関連では毎年何かの変更(その多くが負担増)があり、今後も続く可能性大。こまめにチェックする必要がありそうです。
黒田 尚子(くろだ なおこ)
CFP®認定者
1級ファイナンシャルプランニング技能士消費生活専門相談員資格
消費生活専門相談員資格
CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター
公開日: 2017年04月20日 10:00