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コロナ禍の家計への影響でFPが驚いた3つのこと
番組で取り上げたビッグデータというのは、家計簿アプリ「マネーフォワード」のユーザーの1月から4月にかけての家計収支のデータです(たしか1万人分だか5万人分だか…)。お金のパートについては、筆者がこのビッグデータを読み解くという形で進められました。
今回のコラムは、番組ではお伝えしきれなかった、データ分析の過程で、「なるほどなぁ」と筆者が驚いた3つの点をご紹介します。
まず1つ目は、「保険」の支出が、右肩上がりに上昇していること。
新型コロナウイルス感染拡大後に増加した支出として、「書籍代」や「新聞雑誌」などの巣ごもり消費や、マスクや除菌スプレーなどの「日用品」、休校に伴う「塾・通信教材」などの費用が挙げられます。「保険」は、それらと比較しても増加の割合が大きいと感じました。
データを、「独身」「既婚(子どもあり)」「既婚(子どもなし)」「親と同居」などの属性別と「20代」「30代」「40代」「50代」「60代」など年代別に分けて比べたところ、年代別でいえば、医療保険はどの属性でも、1月から徐々に増えてきて、特に4月が急増(「独身」前年対比+164%、「既婚(子どもあり)」同+144%、「親と同居」同+175%)。(死亡保障としての)生命保険は、いずれの属性でも4月が増加していました。
これはおそらく、緊急事態宣言を受け、医療や死亡へのリスクへのニーズが高まったことが背景にあるのでしょう。
一方、年代別にみると、「20代」「30代」の医療保険。「40代」から「60代」の生命保険の増加が顕著です。
ネットニュースなどでも、保険の対面販売が自粛される中、ネットチャネルの販売が好調と取り上げられていますが、それを裏付ける形となりました。
保険が増えた背景としては、コロナ禍の状況の中、「自分や大切な人に万が一のことがあった場合の死亡や医療リスクへの備えが喚起されたこと」と「在宅ワークや外出自粛が長引いて、テレビやネットなどで保険について考える時間が増えたこと」が考えられます。
続いて2つ目は、「既婚(子どもあり)」および「40代」「50代」の家計について。
一般的に、この年代は収入も高いが、住宅ローンや子どもの教育費など、支出もふくらみがちな年代です。
しかし、子どもの休校やテレワークによる在宅時間の増加によって、食費や日用品、通信費など、他の属性等に比べて、支出は、それほど増えているわけではありません(大きく増えているのは「保険」くらい)。
その一方で、趣味・娯楽。衣類・美容、交通費、交際費などは、大きく減少。収支全体でみてみると、給与はやや増加しているにも関わらず、3月、4月にかけて支出は減少傾向にありました(「既婚(子どもなし)」3月▲5%、4月▲6%、「既婚(子どもあり)」3月▲4%、4月▲5%)。
つまり、頑張って節約に励んでいるということ。それ自体は良いことのように感じられますが、深読みすると、すでに収支はカツカツ状態のため、増やしたくても増やす余裕がない。固く絞った雑巾をさらにギュウギュウと絞っている状態なのかもしれません。
そして3つ目は、新型コロナウイルス感染拡大の状況や緊急事態宣言などによる行動変容が、割とすぐに家計に表れてきていること。
例えば、県外への移動や外出自粛で、旅行や外食、アウトドアスポーツなどの支出は大幅に減少。
とくに、60代の高齢者は、1月から外食費は大きくマイナスになっています(1月▲64%、2月▲30%、3月▲55%、4月▲74%)。また、旅行については、キャンセル料が発生するためか、感染拡大がそれほど深刻になっていない1月、2月はプラスですが、3月、4月は大きくマイナスです(1月+81%、2月+122%、3月▲64%、4月▲85%)。旅行についての増減の推移は、20代と似通っているところがあります。
やはり、在宅でテレビやネットニュースなど、コロナ情報を目にする機会が多く、マスクやトイレットペーパー、ティッシュペーパーが品薄になったと聞けば、慌てて買いに走るといった状況でしょうか?
それだけに、自分にとって有益な情報を取捨選択し、使いこなせる「情報リテラシー」が重要な時代になりつつあることを痛感しています。
黒田 尚子(くろだ なおこ)
CFP®認定者
1級ファイナンシャルプランニング技能士消費生活専門相談員資格
消費生活専門相談員資格
CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター