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親の介護は親の資産を優先的に使用しよう


医療の進歩などによって急速に高齢化が進み、わが国は世界に名だたる長寿国になっています。平均寿命は男女とも80歳を超えていますが、全員が健康なままで生涯を終えるわけではありません。病気やケガなどを原因として、介護になる人は年々増えているのです。なぜ介護が必要になる人が増えたのかと言えば、男性では脳卒中などの脳血管疾患で亡くなるケースが大幅に減少したこと、女性では骨折・転倒で骨粗しょう症になる人が増えたことがその要因の1つと言われています。男性は80~84歳、女性は85~89歳が介護になるケースが最も多く、介護を担うのは、半数以上が同居の配偶者、子ども、あるいは子どもの配偶者などです。介護を担う人は、60~69歳が最も多く、介護期間の平均は56.5ヵ月と長くなる傾向にあります。介護疲れで首を絞めてしまったなどと痛ましいニュースを見聞きすることがありますが、もはや介護は他人事ではなくなりつつあるのです。
  実際、介護状態になった場合、介護保険が利用できるのはご存じの通り。介護サービスなどを利用しても、その費用負担は1割または2割(2018年8月から3割負担の予定)で済みますが、現実には介護保険が適用されないさまざまな費用も発生することが多いようです。たとえば、親が離れて暮らしていれば、実家や介護施設、あるいは病院などに週末毎に通う交通費。自分の住まいに親を引き取らなければ、交通費の負担が数百万円というケースもありえるのです。親だから仕方ないと思われるかもしれませんが、介護を含め身の回りのお世話にかかる費用は、必ず親の財布(資産)から優先的に払うようにするべきです。親の年金が微々たる額、資産もわずかだから、費用を負担すると言っても大した金額ではないと決して考えないでください。また、ここまで自分を育ててくれたのは親のおかげ。子供のときから親には苦労かけたのだから、親に恩返し(親孝行)も含めて費用は自分が払おうと思ってもいけません。微々たる金額であったとしても、お世話の期間が長くなれば塵も積もれば山となる負担額になってしまうのです。最初から親に負担させておかないで、途中から親に負担させる、言い換えれば自分が費用負担のが厳しくなってから、親に負担させようと考えていると、実の親でも気まずい思いをすることが多々あるのです。
  くり返しますが、年金が少ない、資産が少なかったとしても、できるところまでは、親のお金をまず利用してお世話をするのが鉄則だと覚えておきましょう。酷な言い方をすれば、親と自分を比較すれば、親のほうが先に亡くなるのです。親の介護費用を負担し親が亡くなった後、自分の生活、年齢を考えれば自分もリタイアする年齢、あるいは後期高齢者(75歳)が見え始めている年齢のはずです。老後資金を親の介護費用に充ててしまった結果、自分の老後生活が儘ならないことに陥ってしまうかもしれないのです。親だから放っておけない気持ちはわかりますが、お金を含めて自分の生活基盤がしっかりしているからこそ援助(費用負担)はできるのです。仮に親の介護費用の負担をしなければならなくなった場合、兄弟がいれば必ず案分して負担するようにすることが大切になります。自分の将来を顧みず親の介護費用を負担してしまうと、親が亡くなった後に「下流老人」に自分がなりかねないということはお忘れなく。介護費用はまず親のお金(資産)からと肝に命じておきましょう。
深野 康彦(ふかの やすひこ)
AFP ファイナンシャル・プランナー
有限会社ファイナンシャルリサーチ 代表
 
 
公開日: 2017年05月11日 10:00