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住宅ローン減税はあくまでオマケ。無理のない資金計画の優先を

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、住宅販売が今後低迷すると懸念されています。そのテコ入れとして政府は、消費増税対策として導入された「住宅ローン減税の特別措置」について、対象となる入居期限の2年延長を検討しています。

■住宅ローン減税とは?
住宅ローン減税とは、住宅ローンを借りて住宅を取得する際の、金利負担を軽減するための制度です。毎年末の住宅ローン残高の1%が10年間、所得税から控除されます。所得税から差し引ききれない場合は、住民税額からも一部控除されます。特例として、消費税率10%が適用される住宅を取得し、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に入居した場合、控除期間が3年間延長されます。今回の政府与党内での改正案は、この特例の入居要件をさらに2年間延長しようというものです。

■減税効果はどのくらい?
控除額は1年間で最大40万円です。10年間なら最大400万円の控除額となりますが、実際に年間40万円も差し引けるケースは多くありません。年間40万円の控除を受けるには、そもそも4,000万円を超えるローンを借りる必要があり、一般勤労者に返済できる額ではありません。

また、減税適用前の所得税額が40万円を超えていなければ、そもそも40万円を控除できません。配偶者控除や扶養控除などを適用し、所得が低く抑えられている場合、所得税額が40万円以下になるのが一般的です。

例えば、夫・妻・子の3人家族で、夫の年収600万円の方の所得税額は11.25万円(※1)となり、仮に4,000万円の住宅ローンを借りても40万円は控除できません。所得税から差し引けない場合は住民税からも差し引けますが、住民税の控除額には上限があるため、実際に住民税から差し引けるのは13.65万円まで。所得税・住民税を合わせても24.9万円しか控除できず、40万円には遠くおよびません。

住宅ローン減税は仕組み上、高年収の方ほど恩恵を受けやすい特性があります。一般勤労者が減税を理由に借入額を増やしてしまうと、単純に毎月返済額が増えて、家計の悪化を招きます。減税はあくまで「オマケ」程度に考え、「いくらまでなら返済可能か」を中心軸に考え、無理のない返済計画を優先しましょう。

■住宅ローン減税の適用要件にも注意
住宅ローン減税の適用を受けるには、いくつかの要件をクリアしなければなりません。例えば、自己居住用の住宅でなければならず、親族居住用や別荘、セカンドハウス、投資用等の住宅には適用されません。

また、床面積50㎡未満の住宅も適用されません。特に、単身者や夫婦のみが住むマンションの場合、床面積50㎡以上を満たせないケースが考えられますから、減税を受けるなら、床面積も考慮に入れて物件を探しましょう。なお、政府内には、小規模物件でもローン減税を適用しやすくするため、「床面積の要件を引き下げるべき」との案も出ています。

中古住宅でも適用されますが、一定の耐震基準を満たさなければなりません。木造の場合は築20年以内であること、マンションの場合は築25年以内などの要件があり、この点も考慮にいれて物件探しをしましょう。

■住宅ローン減税を受けるには?
減税を受けるには、翌年3月15日までの確定申告時に税務署へ必要書類を提出します。どんな書類が必要かを事前に確認しておきましょう。給与所得者の場合、2年目以降は年末調整で控除を受けられますが、初年度は確定申告が必要ですから注意してください。


※1 社会保険料控除60万円、基礎控除48万円(住民税43万円)、配偶者控除38万円(住民税33万円)、扶養控除38万円(住民税33万円)、生命保険料控除12万円(住民税7万円)で計算

中山 浩明(なかやま ひろあき)
CFPファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野® 研究員

公開日: 2020年11月12日 10:00