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NT倍率が史上最高値!日経平均とTOPIXの違い
2020年12月1日の終値は、26,787円54銭。27,000円台も見えてきました。日経平均株価の27,000円台というのは1991年(平成3年)3月以来の水準です。現在51歳の筆者も当時は21歳の学生でした。日経平均株価の27,000円台を覚えている人は、当時すでに社会人として働いていた世代、おそらく現在は50代半ば以上の人だと思われます。逆に言えば、いま現役で働いている人の大半にとって、初体験の株価水準に入ってきているといえるでしょう。
ちなみに、1980年代に初めて日経平均株価が27,000円台をつけたのは1988年4月でした。そして、その年の12月には30,000円を突破。さらに、翌年の1989年12月末にはバブル期のピークである38,915円87銭を記録します。つまり、27,000円台をつけた1年8ヵ月後には4万円近くまで上昇するというハイペースな株価上昇だったわけです。
当然ながら、30年前と現在とでは状況が異なりますので、今後2年で日経平均株価が4万円近くになるというのはなかなか想像できないところですが、30年前の平成バブル期はそんな動きであったということは知っておいてもよいでしょう。
ところで現在、日経平均株価の上昇とともにNT倍率が史上最高値になってきていることはご存知でしょうか。NT倍率というのは、日経平均株価をTOPIX(東証株価指数)の値で割ったものです。1990年代は12~13あたりで推移、2000年代は少し下がって9~11あたり、そして、2010年代は再び12~13あたりで推移していましたが、ここにきて一気に15を超えてきたのです。それだけTOPIXの上昇よりも日経平均の上昇のほうが大きいことを意味しています。
そもそも日経平均株価とTOPIXは、ともに国内株式の指標ではありますが、計算方法が異なるため、値動きも多少異なります。日経平均株価は、東証一部上場225銘柄の株価をみなし額面の価格に修正して合計し、除数で割ることによって算出しています。株価を合計して銘柄数で割るという単純平均を元にして修正を加えているので、修正平均株価と呼ばれます。株価水準の高い銘柄(=値がさ株)の値動きの影響を受けやすいという特徴があります。
2020年12月1日の株価で計算すると、ユニクロで有名なファーストリテイリングが日経平均株価に最も大きな影響を及ぼしていて、寄与率は11.79%。次いでソフトバンクグループの寄与率が5.90%となっています。つまり、日経平均株価の動きの12%近くはファーストリテイリングが占めていて、6%近くはソフトバンクグループが占めているわけです。逆に、寄与率が0.01%を下回っている東京電力、双日、三菱自動車などは、株価が大きく動いても日経平均株価にはほとんど影響を及ぼさないことがわかります。
一方、TOPIX(東証株価指数)は、東証一部上場全銘柄(2020年12月1日現在2,177銘柄)で計算された時価総額加重型指数です。各銘柄の株価に市場で流通している浮動株数をかけて時価総額を求めて合計しています。東証一部全体の市場規模を示しているとも言えます。値動きの特徴としては、日経平均株価ほど値がさ株の影響は受けませんが、時価総額の大きな銘柄の値動きの影響を受けやすいと言えます。
2020年12月1日現在の時価総額でいうと、1位トヨタ自動車、2位ソフトバンクグループ、3位キーエンス、4位NTTドコモ、5位ソニーの順にTOPIXの動きに与える影響が大きいことがわかります。逆に、時価総額の小さな銘柄(=小型株)は、TOPIXの動きに与える影響は小さくなります。
ここにきて、NT倍率が15を超える史上最高値を記録しているということは、株価水準の高い値がさ株の上昇が大きいことと、それに対して時価総額の大きな銘柄の上昇率はそれほど大きくないことが想像できます。今後、出遅れていた時価総額上位の銘柄の株価が上昇してくるなら、日経平均株価よりもTOPIXのほうの上昇率が高まり、結果として、NT倍率が下がってくるという動きになるのかもしれません。
先行きの株価を正確に予測するのは困難ですが、日経平均株価やTOPIXの動向をチェックすれば、株式市場における物色動向や流れの変化を感じることができます。目先的な株価予測に基づく短期売買を推奨するわけではありませんが、日本経済の先行きを予測しながら動いている株式市場の動向はチェックしておきましょう。
菱田 雅生(ひしだ まさお)
CFP®認定者
1級FP技能士
1級DCプランナー、
住宅ローンアドバイザー
確定拠出年金教育協会 研究員
アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師