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知っておきたい「個人賠償責任保障(特約)」の役割
近年、賠償責任を問われる事故が多くなり、訴訟し裁判まで持ち込まれるケースも少なくありません。具体的には、自転車で走行中に他人にぶつかり死亡させてしまった、あるいはケガをさせてしまった事例が多く、例えば小学生が自転車でぶつかった相手が亡くなった自転車事故に対して、その保護者である母親に9,500万円の賠償命令(2013年3月神戸地裁)の判決も出ています。そのような中、全国の自治体でも自転車保険加入の義務化あるいは努力義務が進んでいます。そこで今回は個人賠償責任保障(特約)についての必要性を考えてみます。
まず個人賠償責任保障(特約)とは、国内外で事故による法律上の損害賠償責任を補償してくれる保障(特約)です。対象となるのは、保険の加入者と家族(同居の親族)、別居の未婚の子で、次の場合に対応しています。
■日常生活に起因する偶然な事故やご自宅の所有・使用・管理に起因する事故
自転車搭乗中に他人にケガをさせてしまった場合、飼い犬が他人に噛みついてケガをさせてしまった場合、他人の物を壊してしまった場合、水濡れを起こして、階下のお宅の家具を濡らしてしまったなど。
事例(1)
マンションの玄関ドアを子どもが開けた時に、同じ階に住んでいる高齢者にドアがあたり、転倒し動けなくなり救急車で運ばれました。その方は肋骨を骨折しており、そのまま数か月入院しました。自動車保険に個人賠償責任特約をつけていたため、保険会社から治療費や慰謝料など100万円を超える金額を支払ってもらいました。まさかドアの外に人が立っていたなど想像もつきませんし、不運だったとしか言いようがないのですが、同じマンションでこんなことが起こるなんてと嘆いていました。
事例(2)
友達と自宅の横の広場でキャッチボールをしていた子どもが、近所の家の窓ガラスを割ってしまい、加入していた傷害保険の個人賠責任特約で修理代を支払ってもらいました。
事例(3)
友達が家に遊びに来ていた時に、ふざけて取っ組み合いをしていて、友達にケガをさせてしまい、自動車保険の個人賠償責任特約から治療費等を支払ってもらいました。
私が経験しただけでももっと事例をはあるのですが、子育て世代の日常生活に必須な保障であることは伝わるでしょうか。
また共済団体や損害保険会社では自動車保険、火災保険、傷害保険の特約として加入するのが一般的です。ここで注意したいのは、補償の重複加入です。保険料も月々数百円とお手頃なので、保険の更新時に保険代理店から勧められて、重複してかけているケースが多々見受けられます。生命保険と違って個人賠償責任保障は仮に2社かけていても2倍補償されません。損害賠償額しか支払いませんし、複数社かけていた場合は保険会社同士で案分して支払います。また最近ではクレジットカードにこの特約が付帯されている場合がありますのであわせて要チェックです。
冒頭でお話しした自転車搭乗中の事故に限っての自転車賠償責任保障(特約)もあります。コロナ禍で首都圏では満員電車を避けるため自転車通勤が増えたと聞きます。ご家族や仕事のスタイルにあわせて、日常生活を補償してもらうのか、自転車だけでいいのか、保険料とあわせて選んでいただけたらいいでしょう。
田中 美子(たなか よしこ )
AFP ファイナンシャル・プランナー
2級ファイナンシャル・
プランニング技能士
TLC(トータルライフコンサルタント)副称号:生命保険協会認定FP
損害保険上級資格
DCプランナー2級
キャリアコンサルタント