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相続人がいない場合、自分の財産はどうなっちゃうの?

人が亡くなると、被相続人の一切の財産は相続人に引き継がれます。相続人は民法によって一定範囲の親族に限定されていて、これを法定相続人といいます。

■誰が法定相続人になるのか
被相続人の配偶者は必ず相続人になります。直系卑属(子や孫)がいれば彼らも相続人になります(第1順位)。直系卑属がいなければ直系尊属(父母等)が相続人になります(第2順位)。直系卑属も直系尊属もいなければ兄弟姉妹が相続人となります(第3順位)。兄弟姉妹がいたが既に死亡しているときは甥や姪がいれば彼らが相続人になります(代襲相続)。

もし、法定相続人がいない場合は自分の財産はどうなるのでしょうか。財産を引き継ぐ人がいなければ、最終的には国庫に帰属します。法定相続人はいるが全員が相続放棄をした場合も同様です。とはいえ、すぐに財産が国に引き渡されるわけではないので、その流れを解説しておきましょう。

【1】相続財産管理人選任の公告
相続人がいない場合、まず被相続人の財産管理や負債の清算を行う「相続財産管理人」を決めます。債権者や特別縁故者など利害関係者の申立てにより家庭裁判所が選任します。一般的には地域の弁護士が選出されます。

相続財産管理人が選出されると、「相続財産管理人選任の公告」を官報にて行います。告知期間は2ヶ月です。これは相続財産管理人が選任された旨を公告することで、相続人がいないかどうかを捜索する意味もあります。

【2】相続債権者受遺者への請求申出の催告
「相続財産管理人選任の公告」から2ヶ月を経過しても相続人が現れない場合は、管理人はさらに2ヶ月以上の期間を定めて「相続債権者受遺者への請求申出の催告」を行います。これは「被相続人にお金を貸している人がいれば精算するから請求してね」ということです。債権者が現れれば相続財産管理人が相続財産から債務を清算します。これは2回目の相続人の捜索の意味もあります。

【3】相続人捜索の公告
上記の期限が過ぎても相続人が現れない場合は、管理人の申立てにより家庭裁判所が6ヶ月以上の期間を定めて「相続人捜索の公告」を行います。この期間を過ぎても相続人が現れなかった場合にはじめて「相続人の不存在」が確定します。

【4】特別縁故者への財産分与
相続人不存在が確定した場合でも、特別縁故者がいれば財産を分与します。特別縁故者とは次のような人達です。

1. 被相続人と生計を同じくしていた人
…内縁の配偶者、事実上の養子・養親など
2. 被相続人の療養看護に努めた人
…業務として報酬を得て看護や介護をしていた人を除く
3. その他、特別な縁故があった人
…師弟関係にあった人など

特別縁故者は家庭裁判所に「財産分与の申立」を行います。分与の審判が確定すると、管理人は特別縁故者に財産を引き渡します。

【5】残余財産の国庫への引継ぎ
縁故者からの財産分与の申立てがないまま、【3】相続人捜索の公告期間終了から3ヶ月が経過したときは、相続財産は国庫に帰属します。管理人は家庭裁判所に対し管理終了を報告します。

■財産の行先を自分で決めたいなら遺言を作成する
このように相続人がいない場合は、財産は最終的に国家に帰属します。財産を引き継いで欲しい人がいる、寄附をしたい団体があるなど、財産の行き先を自分で決めておきたいなら遺言を作成するとよいでしょう。遺言の方法については別の機会に改めてご紹介いたします。
中山 浩明(なかやま ひろあき)
CFPファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野® 研究員

 
公開日: 2021年05月13日 10:00