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外貨建保険の魅力と注意点を理解しよう

外貨建保険への苦情件数の増加傾向が続いていることを受け、生命保険協会は業界共通教育制度として「外貨建保険販売資格試験」の追加創設を決定し、2022年中の販売資格者登録制の開始を目指しています。
苦情の多くは一時払の外貨建保険で、主に銀行の窓口販売で加入したケースが多いと聞きます。国内の低金利の定期預金と比べ、外貨建となると予定利率や積立利率と呼ばれるものが高く、利率だけみればとても魅力的で、銀行が扱っているという信頼により安心しているお客様もいるでしょう。また預金と同じような感覚で加入されたという方も多いため、本人だけではなくご家族からの苦情も多いようです。もちろん売る側にも問題が多いかもしれませんが、買う側もより慎重になり理解を深めてから加入するという注意も必要です。

外貨建保険は特定保険契約として位置づけされており、通常の生命保険の重要事項説明の他に、より厳密に顧客への説明と理解が求められています。(1)保険料は円で支払っても運用は外貨で行うこと、(2)そのために係る費用の発生、解約時などに円で受け取る場合に円高や円安になったらどうなるのか、(3)いつでも解約ができ元本は保証されているのか、(4)早期解約控除や市場価格調整リスクのきめ細かな説明、(5)円高による元本割れリスクや不利益事項など、事細かに説明する義務があります。しかしながら、円より高い利率ばかりが強調され、いざ資金が必要となり円で受け取りたいときに、これらの重要事項の説明を受けていないなどの苦情が多いようです。そこで外貨建保険の仕組みの理解を深め注意点をしっかり押さえ、その魅力を少しでも知っていただけたらと思います。外貨建保険には、大きく3つが考えられます。次にその特徴と注意点をご紹介します。

■一時払外貨建終身保険
銀行窓販などでよく勧められるのは、まとまった資金を資産運用目的や相続対策用として活用する保険です。通常の生命保険と違って大きな保険金がないので、健康告知も不要で90歳まで加入できる保険会社もあり相続対策としての活用が多くみられます。保険の場合、死亡保険金の受取人を指定できるので渡したい人に遺し、相続税の非課税枠を使えるメリットがあります。このような使い方を目的とした場合、中途での解約はまずないかと思いますが、資産運用目的で中途解約もありうると考えた場合、先の特定保険契約の重要事項説明に記載されている不利益事項がありますので特に注意が必要です。高齢者のご加入の際には必ず家族の同席をお勧めします。

■外貨建個人年金保険
将来の年金としての運用を目的とし、保険料は円で支払い運用は外貨であるため、毎月決まった日の為替レートによって今月は何ドル買えたという考え方になります。ドルコスト平均法によりリスクは軽減され、利率は毎月変動しますが最低利率が設定されています。契約から10年間は解約控除があり注意が必要ですが、10年を超えると保険料をストップしたり、再開したりできるため利便性は高いです。また条件が揃えば個人年金控除も使えます。

■外貨建終身保険
保険金も保険料も外貨建で、毎月決まった日の為替レートで保険料が決定するため、保険料は毎月変動し保険金も死亡日の為替によって変動します。円建の終身保険と比べると予定利率が高いので保険料が割安です。三大疾病や介護状態になった場合に保険金が全部又は一部支払われる特約をつけることができます。

このように、外貨建保険ならではの仕組みをよく理解し、円で受け取る場合には為替変動リスクはつきものですが、仮に解約や保険金支払時に円高だった場合には外貨での受け取りが可能です。保険に限らず資産の分散という観点から外貨保有も必要でしょう。基本的には余裕資金での活用が大事だと考えます。
田中 美子(たなか よしこ )
CFP®認定者
2級ファイナンシャル・
プランニング技能士
TLC(トータルライフコンサルタント)副称号:生命保険協会認定FP
損害保険上級資格
DCプランナー2級
キャリアコンサルタント
公開日: 2021年05月20日 10:00