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「患者申出療養」制度とは
人の体の不思議について考えたきっかけとなったワクチン接種ではありますが、人類の様々な病気に対して公的医療保険制度により保険適用で治療し完治する病気もあれば、保険適用に至っていない先進医療という技術が必要となってくる病もあります。この技術に関しては保険適用外ですから全額自己負担で、先進医療の知識に関しては生命保険会社の医療保険などに特約がありますから、保険の募集人の方から説明を受けご存知の方も多いでしょう。では「患者申出療養」とは何なのでしょうか。実は2016年4月から「患者申出療養」という健康保険適用外の治療に関する新しい制度がすでにスタートしており、困難な病気と闘うための選択肢のひとつとなっています。
■「患者申出療養」とは
海外では使われているけれど日本では未承認薬等を迅速に保険外併用療養として使用したいなどという、患者さんからの申出を起点とする新たな仕組みであり、安全性や有効性などを確認したうえで、身近な医療機関で受けられるようにするための制度です。将来的には保険適用につなげるためのデータや科学的根拠の積を目的としており、保険外併用療養費制度の中に位置付けるものです。
■「患者申出療養」の医療費について
「患者申出療養」に係る費用は全額自己負担になり、一般診療と共通する部分である診察・検査・投薬・入院等については保険が適用されます。ここで注意が必要です。「患者申出療養」は申請をしなければなりません。申請をせずに自由診療として治療をうけると、保険適用部分も全額自己負担となります。
■「患者申出療養」の実施まで
保険診療や先進医療で有効な治療法がない場合や先進医療では新規受付が終了してしまった場合などに、かかりつけ医との相談から始まります。患者からの申出を元にして中核病院と連携し計画書を元に検討し、国の会議で検討されてから実施という流れになります。実施までに原則6週間、前例がある場合は2週間程度で審査が終わり実施されます。はじまりは、かかりつけ医との相談からですので、相談しやすく信頼のおけるかかりつけ医と巡り合うことが重要です。そうでない場合はセカンドオピニオンも考え、親身になって相談にのってくれる医師を探すことも重要です。
先進医療は医療機関が主体となり先進的医療を実施します。したがって厚生労働大臣が定めた高度な医療技術を用いた療養であり、かつ厚生労働省に承認された医療機関のみでしか受けられないので、地方では受けられる医療機関は本当に少ないのが残念です。
その反面「患者申出療養」は患者の申出から始まるため患者主体です。未承認薬などの使用について安全性が確認された上で、身近な医療機関においての実施であり、申請した時点の患者の病状に対して有効性・安全性から判断されるので、先進医療に比べ対象となる患者の範囲も広がることがメリットです。
「患者申出療養」は保険対象外ですが、最近では生命保険会社の医療保険などの特約で対応している商品もできていますので、チェックしてみてはいかがでしょうか。また「患者申出療養」の詳細は厚生労働省のホームページでも確認できますので是非ご活用ください。
人生100年時代。治療の選択肢は多いにこしたことはありません。今後の医学の更なる進歩と国の制度の充実に期待をしています。
田中 美子(たなか よしこ )
CFP®認定者
2級ファイナンシャル・
プランニング技能士
TLC(トータルライフコンサルタント)副称号:生命保険協会認定FP
損害保険上級資格
DCプランナー2級
キャリアコンサルタント