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住宅ローンを賢く組むなら「変動金利、35年返済」一択!?

先日、結婚5年目(30代半ば)の共働き夫婦から、住宅ローンの組み方についてのアドバイスをしてほしいと言われました。ご夫婦ともに大企業でバリバリと働いていて、子どもは1人。このまま共働きを続ける予定なので、通勤にも便利な都心のマンションを買いたいということでした。

お二人とも20代のころから資産運用も実践していて、預貯金を含めた金融資産は夫婦合計で2000万円ちょっと。生命保険は医療保険とガン保険に入っているくらいで、余分な保障は一切なし。お金の勉強をとてもよくされている様子。
住宅ローンについてもいろいろと調べたようで、アドバイスというより、自分たちの考え方が合っているのかどうかを確かめたいという感じでした。

彼らの考え方はこうでした。
まず、頭金は入れない。というのも、長期、継続、分散による資産運用で約10年間の運用利回りは年4%を超えている。借入金利よりも運用利回りのほうが高いなら、頭金のために金融資産を取り崩すのではなく、運用は運用で続けたほうが有利だと思うから、とのことでした。

さらに、利用する金利タイプは変動金利型、返済期間は最長の35年で組む予定とのこと。これも理由は、いまなら住宅ローン減税が13年間受けられて、当初10年の控除率は年末ローン残高の1%。変動金利型なら年0.3%台のところもあるので、利息の負担よりも多くの減税が受けられる。返済期間も最長にすることで、ローン残高の減るスピードを遅くして、減税効果を大きくすることができるから、ということでした。

変動金利型には金利変動リスクがあること、また、場合によっては金利上昇で未払利息が発生する可能性もあること、といった注意点についても十分に理解したうえで、やはり、いまはこの選択がベストなのではないかと思ったそうです。

「プロのFPの目から見て、このような考え方は間違っていますか?」
と聞かれ、私は、
「素晴らしいと思います。考え方として間違っていないです。ご夫婦でいろいろと勉強されて、話し合ったうえで決めているのであれば、何の問題もないと思います」
と答えました。

「老婆心ながら、あえて注意点を付け加えるなら、将来の金利がどうなっているかはわからないので、仮に金利が3%になったら毎月返済額がどう変わるかなどの試算はしておくとよいでしょうね。それから、住宅ローン減税が終わったら繰り上げ返済をして、残りの返済期間を短くするのもひとつの方法でしょうね」
と付け加えました。

すると、その点もすでに考えていたようで、教育資金の準備状況も考慮しながら、13年後に一気にローンを繰り上げ完済してしまうか、その時点での借入金利と運用利回りの状況を見て判断しようと思っている、とのことでした。

確かに、将来、変動金利型の適用金利が上がっていたとしたら、それはおそらく日本銀行が利上げを実施したから。日銀が利上げをするということは、日本経済は多少なりとも好景気になっているはず。運用利回りも、いま以上に高まっている可能性が考えられます。

だとすると、住宅ローン減税が終わったからといって、残りのローン残高を一気に完済するのではなく、返済は返済、運用は運用で別々に行っていたほうが有利になる可能性が高いわけです。一般の30代の方で、そこまで考えられている人がいるのかと、とても感心しました。

ただし、このような考え方は、一般のすべての人に一律におススメできるものではありません。きちんと勉強し、リスクを十分に認識したうえで、そのリスクを取りに行くような考え方ですので、自己責任の意識をしっかりと持てる人でないとダメだと思います。

なお、住宅ローン減税の控除率一律1%というのは、令和4年度の税制改正によって見直される方向性が示されていますので、来年以降はこの夫婦のような考え方が有利かどうかは一概に言えなくなる可能性がありますのでご注意ください。
菱田 雅生(ひしだ まさお)
CFPファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所®長野 提携講師
1級FP技能士
1級DCプランナー、
住宅ローンアドバイザー
確定拠出年金教育協会 研究員
アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師
公開日: 2021年07月22日 10:00