介護の保障は必要か?
日本人の平均寿命が長くなったのはいいことですが、介護状態になられてしまう方も増えています。そこで、公的介護保険がありますが、その内容は必要な医療サービスや福祉サービスを提供する制度で、市町村が保険者として事業を運営しています。
その流れは、
① 市町村への申請
② 要介護・要支援の認定
③ ケアプランの作成
④ サービスの医療
利用者は費用の1割(一定以上所得者は2割)を支払う。
介護認定を受けても、資金の給付があるわけではなく、各認定程度の介護のサービスを受けられるということで、そのサービスが不十分の場合は、民間の介護事業会社にお金を支払って介護してもらいます。
介護期間はどのくらいでしょうか?
過去3年間に介護経験がある人に、どのくらいの期間介護を行ったのかを聞いたところ、介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均59.1ヶ月(4年11ヶ月)になりました。4年以上介護した割合も4割を超えています。
<生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/平成27年度>
介護費用としてはどのくらい必要でしょうか?
<一時的な費用の合計>
平均80万円
<月額>
平均7.9万円
<生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/平成27年度>
上記平均データで計算してみると、
月額7.9万円×59.1ヶ月+一時金80万円=546.89万円
介護費用として約550万円必要ということになりますが、この資金はどうすればいいでしょうか?
最近生命保険会社が、介護保険や介護特約つきの保険を各社開発しています。はたして自助努力としての介護保険は(介護特約は)必要でしょうか?最近ご相談を受けた25歳のお客様(新婚)から拝見した提案書、若い女性に介護の保障を何千万円かつけていました。死亡保障も兼ねています。そもそも、25歳の女性(新婚)にこのような保障が必要か疑問に思いましたし、優先順位を間違っていると思いました。しかも掛け捨てで更新型の特約です。
お客様のライフプランを考え、保険の役割を果たすための優先順位の決め方、不安なこと心配なこと、これから訪れる妊娠、出産、その後の教育費、住宅資金準備など、介護より先に考えるべきことが沢山あることをお話し、納得していただきました。
もし彼女が50歳の女性で、教育費も終わり、住宅ローンも目処がたった頃なら介護保障を提案するのはわかりますが、的が外れているというか、お客様のことを考えていないというか、残念な提案の仕方だと思いました。
さて、話は介護の保険に戻りますが、保険会社が介護に目をつけたのは、医学の進歩などにより日本人が長生きすることによる介護リスクが高まったことで力を入れ商品開発をしています。
ですが、上記試算による平均で約550万円と言われている介護に係る費用、果たして掛け捨ての介護保険や介護特約で準備する必要があるでしょうか?
介護状態になるかどうかわからない、平均550万円で済むかどうかもわからない、だから保険が必要と思うかもしれませんが、私ならその資金を貯めることの方が大事だと思います。なぜなら、もし介護状態になれば貯まった資金が活躍してくれるし、幸いにも介護状態にならなかったら、使い道は他にも沢山あるからです。更に、介護保険は公的介護保険の認定に連動しているケースが多いです。要介護のどの程度で支払われるのかも大事です。ただ公的介護保険の認定基準が厳しくなるようなことも耳にします。今現在の認定基準ならOKでも将来今の基準が変わるかもしれません。公的介護保険の認定に連動した介護保険ですと、仮に「公的介護保険の要介護3で支払います」という介護保険に加入していて、将来要介護3の認定基準が厳しくなり要介護2に変わってしまったら、支払われなくなるということです。保険会社によっては、公的介護保険以外の条件を設定している会社もあります。現金預金があれば、介護でも使えるし老後の生活費でもリフォームでも兎に角自由に何にでも使えます。
介護保険も標準死亡率の低下で来年4月に値上げの対象となる保険のひとつです。不安だからひとつ加入しておこうかという方もおられるかもしれませんが、何らかの方法で現金をストックしていく方が利便性は高いと思えてなりません。
田中 美子(たなか よしこ )
AFP ファイナンシャル・プランナー
2級ファイナンシャル・
プランニング技能士
TLC(トータルライフコンサルタント)副称号:生命保険協会認定FP
損害保険上級資格
DCプランナー2級
キャリアコンサルタント