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「金融サービス仲介業」の創設による生活者への影響とFPの立ち位置

2020年6月に「金融商品の販売等に関する法律」の改正が公布、2021年11月1日の施行により「金融サービス仲介業」が創設されます。金融サービスの3分野である銀行、保険、証券は、これまで契約締結を仲介する場合には、個別に登録する必要があり、所属制となっていました。「金融サービス仲介業」では、1回の登録ですべての分野の仲介が可能になり、所属制も廃止されます。
1回の登録で複数分野のサービスが仲介しやすくなるのが大きな特長です。複数の業種にまたがった多くの金融商品やサービスをワンストップで提供できるようにするための法改正であり、業態ごとに縦割りだった既存の仲介業と異なり、個人が金融商品を分野横断的に比較検討しやすくすることが目的とされています。

それでは「金融サービス仲介業」では、どのような商品が取り扱えるのでしょうか?実は取扱商品やサービスの範囲が明確化されています。商品が複雑でないもの、日常生活に定着しているものなどで、高度な説明を要しないと考えられる商品・サービスに限定されています。顧客保護の観点からリスクを低減し、そのために必要な法整備が重視されています。
従来の法律では、銀行分野での銀行代理業者、保険分野での保険募集人・保険仲立人、証券分野での金融商品仲介業者は、契約の締結の代理または媒介(保険仲立人は媒介のみ)が可能でしたが、新仲介では、すべてが「契約の締結の媒介」のみとなります。

業種別に取扱可能な商品例と取扱不可の商品例をみてみましょう。
■銀行分野
取扱可能例:普通預金、定期預金、住宅ローン
取扱不可例:投資性の強い商品(仕組預金等)、なお外貨で引出しが可能な外貨預金は可
■保険分野
取扱可能例:定期保険、傷害保険、旅行保険、ペット保険など
取扱不可例:投資性の強い保険(変額保険・外貨保険等)、火災保険(家財保険は可)、終身保険、高額な生命保険(生保1,000万円超、損保2,000万円超、第3分野600万円超)
■証券分野
取扱可能例:公社債、上場株、投資信託
取扱不可例:仕組債、非上場株式、デリバティブ取引、複雑な投資信託

このように、取扱商品・サービスが限定されているため、「金融サービス仲介業」では、オンラインでのサービス提供を念頭においています。オンライン通販などで衣料品や書籍などを販売している事業の中に金融サービスを参入させ、「金融サービス仲介業」となり、衣料品を購入する感覚で金融商品を購入できるようになり、消費者の多様なニーズへの対応によって新しい経済圏の拡大に繋げることが期待されています。対面販売も可能ですが、その場合は、例えば家電量販店やデパートが「金融サービス仲介業」となり、店舗の一角において相談コーナーを設け、家電商品等を購入しに来た顧客に対して、対面式でアドバイスや金融商品の媒介が可能となります。

生活者にとっては、よく買い物にいく店舗、あるいはよく利用するWEBサイトにおいて、複雑ではない金融商品の購入や手続きができるとしたら、利便性はとても高く感じられるでしょう。今やスマホがあれば多くのことが完結してしまう世の中です。初めて金融商品を購入する、初めて保険に加入する若い世代の方々には、受け入れやすい方法かもしれません。しかしながら、商品の少なさや選択肢の少なさを考えると、長い人生のライフプランにおける、一時的な活用として位置付けるべきではないかと感じています。生活者もファイナンシャルプランナーも「金融サービス仲介業」とのより良い付き合い方と活用を今後検討していくことになりそうです。
田中 美子(たなか よしこ )
CFP®認定者
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
TLC(トータルライフコンサルタント)副称号:生命保険協会認定FP
損害保険上級資格
DCプランナー2級
キャリアコンサルタント
 
公開日: 2021年09月23日 10:00