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マイホーム借り上げ制度 ~空き家となった実家の活用法~
「実家がなくなるのは寂しい」「他のきょうだいとの意見が合わない」「取り壊しには費用がかかるけど、お金がない」「売りたくても買い手が見つからない」など、さまざまな理由で空き家のまま放置してしまう人は多いようです。親が元気なうちに家をどうするか話し合っておきたいところですが、もし亡くなったら、要介護になったら、とは言い出しにくいというのが現実でしょう。誰も住まなくなった家の処分方法については、大きく分けて「貸す」「売却する」「空き家として管理する」という3つの選択肢があります。このうち、貸すときに利用できる「マイホーム借り上げ制度」について、ご説明します。
マイホーム借り上げ制度とは、「一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI)」が行っているシニアのためのマイホーム借り上げ制度で、JTIがマイホームを借り上げて、子育て世代などに貸し出すシステムです。 入居者の募集や契約手続き、家賃の徴収などはJTIが行います。賃料は相場より低めになりますが、借り手が見つからず空き家になった場合でも、JTIから保証された最低家賃相当分を受け取れること、また定期借家方式で貸し出すため安心感があります。
対象となるのは、原則、50歳以上の方が所有するマイホームです。親の相続や、自宅からマンションや高齢者施設などに住み替えたために空き家となったマイホームであれば利用できます。この制度を利用する人(家の所有者)が死亡するまでの「終身型」の場合、所有者が途中で家に戻りたくなった場合には、借りている人の契約更新のタイミングで借家契約を終了できます。あらかじめ契約期間を決めておく「期間指定型」では、原則として中途解約はできませんが、入居者が出ていかなくて困るということがありません。一方、借りる側は定期借家契約で、更新時には優先的に再契約できます。相場より安い家賃で借りられ、敷金や礼金が不要というメリットもあります。
【マイホーム借り上げ制度の詳細】
<対象者>
日本、または海外に居住する50歳以上の日本人。ただし、「相続空き家特例」などに該当すれば、50歳未満でも利用可
<対象となる住宅>
一戸建ておよびマンションが対象。耐震基準を満たしていなければ、耐震補強工事が必要とある。抵当権が設定されていないことが条件だが、住宅ローンが残っていても、提携ローンへの借り換えで利用可となる場合もある。
<契約形態>
終身型(中途解約可)または、期間指定型(中途解約不可)
<相続>
利用者死亡後は、配偶者や子に相続可能。同時に制度利用者(オーナー)の地位も相続されるので、死亡時点で入居者がいる場合には、その契約期限(最長3年)までは継続する。期間満了時にはすみやかに相続人に明け渡される。相続人は制度の継続利用も可。ただし相続人が50歳未満の期間は家賃保証が受けられない。
<手数料等>
所定の管理手数料をJTIに支払う。住宅の性能を維持するためのメンテナンス費が別途かかる場合がある(入居中の修繕費は貸主負担)。
制度を申し込み後、1人目の入居者が決定以降は、空室が発生しても規定の賃料が保証されます。住宅が賃貸可能な状態である限り借上げが継続されるため、安定した賃料収入が見込めます。
空き家を売却せずに有効活用するには、「誰かに貸す」という方法がもっとも現実的です。通常の賃貸では居住者の権利が強いため、施設などで暮らす親が家に戻りたいといっても難しく、その家の処分も思うようにできなくなります。愛着のある家を手放したくない、という人には、検討の余地がある制度ではないでしょうか。
山田 静江(やまだ しずえ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所®長野 研究員
日本FP協会埼玉支部 副支部長