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バランスシートに家計簿アプリを活用
長い目でお金を育てていくには金融資産全体を俯瞰する目が大切です。
そこでおすすめしたいのが、1年や半年に1回バランスシートを作って、定点観測する方法です。バランスシートとは、ある時点において「どのくらい資産を持っているか」「どのくらい負債(借金)があるか」を書きだしたものです。それぞれそのときの時価を記載します。左側に資産、右側に負債を記入します。資産は預金や株式、投資信託などの金融資産と、土地や建物といった固定資産に分かれます。そして、総資産から総負債を差し引いた値が純資産(正味財産)になります。
定点観測すると、リタイアに向けて資産が積みあがっているか、負債が圧縮しているかを確認できます。最近は家計簿アプリで金融機関を連携させると、自動的にバランスシートが作成できるので、そうしたツールを活用してもいいでしょう。
このとき、金融資産の部分に別枠で「年金資産」を記載したいところです。年金資産とは、今は引き出せないけれど、将来退職金や年金として受け取る分として積みあがっている資産をさします。例えば、会社から受け取る退職一時金や企業年金(確定給付型や企業型確定拠出年金)のほか、iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済などがこれにあたります。
■家計簿アプリで確定拠出年金の残高も連携できる!
企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)やiDeCoの残高は、以前は加入する運営管理機関のWEBサイトにログインしたり、年に1~2回送付される「お取引状況のお知らせ」を確認したりする必要がありました。それが、最近では運営管理機関のアプリや、複数の家計簿アプリで確定拠出年金の残高がみられます。家計簿アプリを使っている人は、この機会に、加入する企業型DCやiDeCoの記録関連運営管理機関などを登録しましょう。記録関連運営管理機関とは、例えば、JIS&T(楽天証券やみずほ銀行など)やSBIベネフィットシステムズ(SBI証券)のほか、NRKや損保ジャパンDC証券などがあります(「お取引状況のお知らせ」などに記載されているはずです)。一度登録すると、後は自動的に企業型DCやiDeCoの残高がスマートフォンやパソコンでみられるようになります。
フィデリティ・インスティテュートが2021年10月に実施した「確定拠出年金1万2000人意識調査」(対象者は約1万2000人、うちDC加入者は約3000人)では加入者がどのような手段で確定拠出年金(DC)の口座残高を確認しているのかを調べています。運営管理機関のWebページがもっとも多く(52%)、次いで運営管理機関から送付される書類(35%)となっていますが、家計簿アプリという人も12%います。
また、家計簿アプリや運営管理機関アプリを通じて残高確認をしている人はDCを身近に感じる人の割合が高い(90%)という特徴もあります(運営管理機関からの書類は69%)。
<DC口座残高の確認手段>
運営管理機関から送付される書類:35%
運営管理機関のWebページ:52%
運営管理機関のコールセンター:7%
運営管理機関のアプリ:16%
家計簿アプリ:12%
*「確定拠出年金1万2000人意識調査」(フィデリティ・インスティテュート調査、2021年10月)。重複回答可のため。合計は100%を超える
なお、確定給付型の企業年金や退職金については現状では家計簿アプリへの連携は難しいため、会社が提供している情報を自分で入力します。小規模企業共済も送付されるハガキをみて年に1回残高を入力・更新しましょう。
■金融資産全体を俯瞰する
私たちはともすると、「iDeCoだけ」「企業型確定拠出年金だけ」というようにある一部分だけに注目して何に投資するかを考えがちですが、資産や負債は俯瞰してみることが大事です。
バランスシートを作ると、金融資産はどんな投資対象(日本株式や先進国株式、預金など)にどのくらいおいてあるか、運用益が非課税になる口座に期待リターンの高い資産クラスが割り振られているか、株式部分の変動が大きくても、金融資産全体でみるとそれほどでもないな――などがわかります。また、住宅ローンを組んで返済を始めたばかりの人はマッチング拠出やiDeCoよりも、その分のお金を繰上返済に回して利息を減らしたほうがトク、という場合もあります。
バランスシートの作成によってリスク管理もしやすくなるはずです。定期的にバランスシートを作って定点観測。リタイアまでに健全なバランスシートを目指しましょう。
竹川 美奈子(たけかわ みなこ)
ファイナンシャル・ジャーナリスト
LIFE MAP,LLC代表