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株式の20倍も取引量の多い債券の市場は要注目

2020年度(2020年4月~2021年3月)の株式の取引量(売買代金)は、日本取引所グループの公表資料によると、約767兆円だったようです。

一方、同じ期間の債券の取引量(公社債店頭売買高)は、日本証券業協会の公表資料によると、なんと約2京1,494兆円だったようです。

単位が、「京(けい)」です!
すごいですね。

世界銀行の統計「株式市場の取引高の国別ランキング(2020年)」によると、1位中国(31兆ドル)、2位アメリカ(23兆ドル)、3位日本(6兆ドル)となっていますので、日本の株式の取引量もかなり多いほうなのですが、債券の取引量はケタが違います。日本の場合は、約28倍も債券のほうが多いわけです。

ちなみに、株式市場の時価総額の国別ランキング(2020年)は、1位アメリカ(41兆ドル)、2位中国(12兆ドル)、3位日本(7兆ドル)となっています。

では、年間で2京円も売買されている債券は、誰が、どんな債券を売買しているのかというと、2020年度の内訳は以下のとおり(単位:億円)。

都市銀行(長信銀等を含む)         8,219,892
地方銀行                                 802,445
信託銀行                                22,658,389
農林系金融機関                        736,193
第二地銀協加盟行                     33,180
信用金庫                                 255,253
その他金融機関                       29,600,482
生保・損保                             2,128,130
投資信託                                2,656,078
官公庁共済組合                        10,866
事業法人                                 67,319
その他法人                              24,807
外国人                                   88,228,300
個人                                       4,906
その他                                   7,430,224
債券ディーラー                        52,080,120
合計                           214,936,584

カテゴリー分けをすると外国人が最も多いことがわかりますが、金融機関と債券ディーラー(ほとんどが金融機関所属だと推測される)の取引量を合計すると、全取引量の半分以上になり、外国人を上回ります。

そして、取引されている債券は、国債だけでなく、地方債や社債も含まれますが、国債の取引が圧倒的に多く、2020年度の債券の取引のうち、なんと99.8%が国債でした。

私が山一証券にいた30年近く前の時代でも、債券の取引のうちの9割以上は国債でしたから、大きくは変わっていませんが、近年は国債の発行量がどんどん増えていることからも、日本の債券のほとんどが国債になってきているということです。

さて、そんな債券市場ですが、一般の人にはあまり馴染みがないかもしれません。
でも、債券市場の需給関係によって決まるのが世の中の金利水準です。昔から長期金利の指標が10年満期の国債の利回りであるように、国債の売買によって金利が決まってくるともいえます。

もちろん、日本銀行が短期金利や長期金利を直接的または間接的にコントロールしている部分はあります。しかし、実際の債券市場の需給関係まで完全にコントロールできているわけではないと思います。そういう意味でも、債券市場がどのように動いているのかを注目することは、今後の金利がどのように変化していくのかを見守ることになります。

金利は、景気にも、物価にも、為替にも、株価にも影響を及ぼします。
金利が低くなると、景気拡大、物価上昇、円安、株価上昇につながる可能性が高まります。
一方、金利が高くなると、景気後退、物価下落、円高、株価下落につながる可能性が高まります。

また、景気や物価、為替、株価、金融政策の動向によって金利が動くこともあります。
いま、世界的な物価上昇が懸念されて、アメリカなどでは金利の引き上げが検討されています。TVや新聞、ネットなどのニュースで報道されているのを見た人も多いことでしょう。

将来を正確に予測することは困難ですが、債券市場や株式市場の動向を見ておくことで、今後の方向性について、いくつかのシナリオを想定しておくことができるようになっていきます。是非注目してみてくださいね。

菱田 雅生(ひしだ まさお)

CFPファイナンシャル・プランナー

生活経済研究所®長野 提携講師

1級FP技能士

1級DCプランナー、

住宅ローンアドバイザー

確定拠出年金教育協会 研究員

アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師

公開日: 2022年01月27日 10:00