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【フラット35】の制度改正が驚くほどわかりにくい!?

【フラット35】は住宅金融支援機構の住宅ローンで、最長35年(※1)の全期間固定金利商品です。銀行が扱う変動金利のような難しいルールも無く、非常にシンプルな仕組みのはずが、新しく制度を追加するたびに複雑になりわかりにくくなってしまいました。それが2022年4月と2022年10月にさらにわかりにくい制度へとリニューアルします。

◆現状の制度(2022年3月末まで)
通常の【フラット35】に加えて、ある一定の性能をクリアした住宅を取得する場合に利用できる【フラット35】Sがあります。【フラット35】Sは住宅の性能により当初10年間金利が0.25%引き下げられる金利Aプランと当初5年間金利が0.25%引き下げられる金利Bプランに区分されます。また、自治体と連携した【フラット35】地域連携型(子育て支援または地域活性化)を利用すると、さらに当初5年間0.25%の金利が引き下げられ、最大で【フラット35】S(金利Aプラン)と【フラット35】地域連携型の併用で当初5年間は0.5%、以降10年目までが0.25%の金利引き下げが可能です。

◆2022年4月の制度改正
現行制度に加えて【フラット35】維持保全型が新設されます。(1)長期優良住宅、(2)予備認定マンション、(3)管理計画認定マンション、(4)安心R住宅、(5)インスペクション実施住宅、(6)既存住宅売買瑕疵保険付保住宅のいずれか(※2)に該当する場合、当初5年間金利が0.25%引き下がります。

また、従来の【フラット35】地域連携型は、子育て支援のみ当初10年間0.25%の金利が引き下げに拡充されます。

新設される【フラット35】維持保全型や【フラット35】地域連携型は従来の【フラット35】Sとの併用が可能ですが、【フラット35】維持保全型、【フラット35】地域連携型(子育て支援)、【フラット35】S(金利Aプラン)の組み合わせでは、当初10年間0.5%の金利引き下げとなり、当初5年間0.75%、の引き下げにはならない点に注意しましょう。

2022年3月の【フラット35】の最低金利が1.43%ですから、もしこのままの金利で4月を迎えた場合、当初10年間0.93%、以降35年目まで1.43%ですから、固定金利としては抜群の低金利商品といえます。

◆2022年10月の制度改正
さらに【フラット35】S(ZEH)が加わります。ZEHとは建物の断熱性能等を大幅に向上させ、高効率な設備システムにより、快適さを維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入により、年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指した住宅です(※3)。この場合、当初5年間0.5%、以降10年目までが0.25%の金利引き下げが可能です。

しかし、ここまで制度が増えてくると組み合わせも多くわかりにくいため、金利引き下げの方法がポイント制に変更されます。住宅の性能や自治体との連携により使える制度をポイントとして加算し、獲得した合計ポイントにより金利の引き下げ幅や期間が決まります。

◆獲得した合計ポイントによる金利の引き下げ
1ポイント獲得 当初5年間0.25%金利引き下げ
2ポイント獲得 当初10年間0.25%金利引き下げ
3ポイント獲得 当初5年間0.5%、以降10年目まで0.25%金利引き下げ
4ポイント以上獲得 当初10年間0.5%金利引き下げ

例えば、長期優良住宅で地域連携型(子育て支援)の場合、獲得できるポイントは【フラット35】S(金利Aプラン)で2ポイント、長期優良住宅で1ポイント、地域連携型(子育て支援)で2ポイントの合計5ポイントとなり、当初10年間0.5%金利引き下げが利用できます。

◆【フラット35】の制度改正は浸透するか?
多くの場合は住宅会社の営業担当者が顧客に対して住宅ローンを斡旋します。営業担当者が現状の【フラット35】や、4月の改正、10月の改正を正しく理解できなければ顧客に紹介すらされず、住宅購入者に浸透するのは難しいでしょう。しかし、金利の引き下げ幅も大きく、固定金利としては相当に低金利ですから、住宅購入の際には選択肢の一つに加えておきたいところです。


※1 長期優良住宅を取得する場合には最長50年
※2 新築の場合は(1)~(2)、既存住宅は(3)~(6)
※3 経済産業省資源エネルギー庁(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/index03.html

市川 貴博(いちかわ たかひろ)

CFP ファイナンシャル・プランナー

生活経済研究所®長野 主任研究員

日本FP協会静岡支部 幹事

公開日: 2022年03月17日 10:00