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2022年4月は年金制度改正が目白押し!

2020年に可決・成立した「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第40号)は、改正事項が公的年金だけでなく私的年金にも及ぶほか、施行期日が公布日(2020年6月5日)から2024年10月1日まで何段階もの長きにわたります。2022年4月は、同法で定められた改正事項が最も多く施行される時期なので、今回は2022年4月施行の公的・私的年金の改正事項のポイントを解説します。

1. 在職老齢年金の支給停止基準額の見直し
在職老齢年金とは、年金(基本月額)と賃金(総報酬月額相当額)の合計額が一定の基準を超えたときに、老齢厚生年金の全部または一部を支給停止するしくみのことです。
2022年4月からは、60歳以上65歳未満の在職老齢年金(低在老)の支給停止基準額が、65歳以上の在職老齢年金(高在老)と同じ「47万円」に引き上げられます。なお、支給停止基準額は名目賃金の変動等に応じて今後改定される可能性があります。


2. 在職定時改定の導入
老齢厚生年金を受給しながら厚生年金保険の適用事業所で就労している方は、資格喪失(退職または70歳到達)するまでは当該就労期間を反映した年金額の改定(退職改定)が行われません。
2022年4月からは、上記の退職改定に加えて、65歳以上70歳未満の間は在職中であっても年金額を改定する「在職定時改定」が導入されます。年金額は、毎年9月1日を基準日として算定され、10月分(12月振込分)から改定されます。


3. 公的年金の受給開始時期の選択肢の拡大
老齢基礎年金および老齢厚生年金の繰下げ受給の上限年齢が70歳から「75歳」に引き上げられます。これにより、公的年金の受給開始時期の選択肢が「60歳から75歳の間」に拡大されます。併せて、繰上げ受給を選択した場合の減額率が1月あたり0.5%から「0.4%」に緩和されます。
なお、繰下げ受給の上限年齢の拡大は、施行日(2022年4月1日)以後に70歳に到達する方(1952年4月2日以後生まれ)が対象となるほか、繰上げ受給の減額率の見直しは施行日の前日(2022年3月31日)時点で60歳に達していない方(1962年4月2日以後生まれ)が対象となります。


4. 確定拠出年金(DC)の受給開始時期の選択肢の拡大
企業型確定拠出年金(企業型DC)および個人型確定拠出年金(iDeCo)の受給開始時期の選択肢の上限が、70歳から「75歳」へと拡大されます。これは、上記3.の公的年金の受給開始時期の選択肢の拡大と平仄(ひょうそく)を合わせたものです。


5. 加給年金の支給停止の見直し
加給年金とは、20年以上の厚生年金保険の被保険者期間を有する年金受給者に、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)において生計を維持している配偶者や子がいる場合に、年金額に一定額が加算されるしくみのことです。
2022年4月からは、加給年金の加算対象となる配偶者が被保険者期間20年以上の老齢・退職を支給事由とする年金の受給権を有する場合、その支給の有無にかかわらず加給年金が全額支給停止となります(経過措置あり)。


6. 年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え
2022年4月から、新たに公的年金に加入する方や紛失等により年金手帳の再発行を希望する方には、年金手帳に替えて「基礎年金番号通知書」が発行されます。なお、既存の年金手帳は引き続き利用可能です。


7. 年金担保貸付事業の廃止
年金担保貸付事業は、年金生活者に対し公的年金等の受給権を担保に小口の資金の貸付けを行う事業として1973年の法改正により創設されましたが、2022年3月末をもって新規貸付申込の受付が終了されます。

2022年4月施行の改正事項は以上です。しかし、本年2022年は、4月以降にも様々な改正事項が施行される見込みです。詳細は次回のコラムでご案内します(続く)。

谷内 陽一(たにうち よういち)

社会保険労務士

証券アナリスト(CMA)

DCアドバイザー、1級DCプランナー

公開日: 2022年04月07日 10:00