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世帯と扶養の違い
1.「世帯」とは
自治体のサービスを利用するときや、国民健康保険、介護保険などの社会保険では、所得区分などを世帯単位で判断します。このときの「同じ世帯」とは、「同じ家に住んでいる家族」とは限りません。
厚生労働省の定義では、「世帯とは住居及び生計を共にする者の集まり又は独立して住居を維持し若しくは独立して生計を営む単身者」となっています。つまり、住む場所が同じでお財布も一緒の単位が「世帯」となります。
同じ世帯であるかどうかは、通常は「住民票」で判断されます。一緒に住んでいても住民票が同じであれば「同世帯」、別であれば「別世帯」とみなされます。
(1)介護保険や自治体のサービスにおける「世帯」
→住民票が同じ人のグループ(住民票上の世帯と同一)
年金収入がある親と、給与等収入がある子が同居する場合、住民票を一緒にしていると同世帯となり、子世帯を含めた収入で判断されますが、住民票が別なら親の所得のみで判断されるため、介護保険料やサービス費の自己負担に差が出る場合があります。
(2)国民健康保険や後期高齢者医療制度の「世帯」
→同じ医療保険に加入している人のグループ
公的医療保険の「世帯」は「住民票上の世帯」ではなく、同じ医療保険制度に加入している人同士が「世帯」となります。これを、「支給認定世帯」といいます。同居していても、勤労状況や年齢、扶養状況などによって、「(勤務先ごとの)健康保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」などバラバラに加入するため、それぞれのグループで「同じ世帯」となります。
ただし、国民健康保険の保険料は「住民票上の世帯主」宛てに請求されます。世帯主は健康保険に加入して国民健康保険には加入していなくても、世帯主が保険料の支払義務者となるのです。
2.「扶養」とは
扶養とは一般的に、親族から経済的援助を受けることをいいます。この扶養という言葉は、健康保険と所得税・住民税で使われますが、健康保険の「扶養」と、税金の「扶養」では定義が異なります。
(1)健康保険の「扶養」
会社員などが加入する健康保険では、被保険者の一定の範囲の家族を被扶養者(扶養される人)として加入できます。被扶養者は、保険料の負担なく健康保険の保険給付を受けられます。
大企業などが運営する健康保険組合(けんぽ組合)の場合、扶養の条件や保険給付について、組合ごとに多少異なりますので、今回は、中小企業等の会社員などが加入する全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)の場合で、見ていきます。
<被扶養者になれる人>
日本国内に住民票があり、被保険者により主として生計を維持されていること、および次の(A)(B)の両方に該当していること。なお、75歳以上は、全員が後期高齢者医療制度に加入するため被扶養者にはなれません。
(A)収入要件
年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は、年間収入180万円未満)、かつ
・同一世帯の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
・別世帯の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
※1:年間収入は過去収入ではなく、将来の見込み収入額。雇用保険の基本手当や、
健康保険の傷病手当金や出産手当金なども含まれる
※2:収入が被保険者の収入の半分以上でも認められることがある
(B)同一世帯の条件
ア.被保険者と同居していなくてもOKの人
・配偶者(内縁関係を含む)
・子、孫および兄弟姉妹
・父母、祖父母などの直系尊属
イ.被保険者と同居していることが必要な人
・上記ア以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)
・内縁関係の配偶者の父母および子
(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)
健康保険で被扶養者になれる範囲は、かなり広いことが見て取れますが、収入については具体的な基準があります。また親子や夫婦を被扶養者にするには必ずしも同居や世帯同一でなくてもいいのですが、世帯別の場合にはその人の収入以上の生活費等を送金していることが認定要件に加わります。
(2)所得税や住民税の「扶養」
所得税や住民税を計算するときに、扶養対象となる親族がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。また、その扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合には、別途障害者控除を受けられます。
扶養控除の対象となる条件は立場により様々ですが、例として親を扶養控除の対象とするための条件を見てみましょう。
<扶養控除対象となる親の条件>
・納税者と生計を一にしていること
・年間の合計所得金額が48万円以下であること
・青色申告者の事業専従者や白色申告者の事業専従者でないこと
このとき同居(同一の家屋に住んでいる)であれば、原則として「生計を一にしている」とみなされます。別居でも、常に生活費や療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にしている」ものとして取り扱われます。
社会保険は実態で判断されることが多いので内縁でも「配偶者」とみなされ扶養の対象となりますが、税金分野では所得税・住民税のほか、相続税・贈与税などでも内縁関係は「配偶者」とはなりません。この点は社会保険と税金分野の大きな違いです。
ライフプラン・マネープランにおいては、「世帯」と「扶養」は必ず出てくるポイントなので、上記の違いをしっかり押さえておきましょう。
山田 静江(やまだ しずえ)
CFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所®長野 研究員
NPO法人ら・し・さ
終活アドバイザー協会 副理事長