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義務化されつつある自転車の保険加入

「自転車に乗るためには保険に加入しないといけません」
もしあなたがこう言われたら、どう思いますか?「何を大げさなことを」と感じる人が大半だと思いますが、実は日本において実際に始まっている取り組みなのです。

どこでルール化されたのか
自転車への保険加入を義務付けるのは自治体の条例です。国の法律ではありませんので、日本全国で一斉に「保険に入らないと自転車に乗れない」ようになったわけではありません。しかし、条例が施行された地域では実際に起こっている事実です。いち早く条例づくりに取り組んだのは兵庫県で、2015年4月から条例が施行され、2015年10月1日からは自転車損害賠償保険への加入が義務付けられています。次いで2016年7月に大阪府、その後は滋賀県へも広がり、今後は福岡県(一部は既に施行)、名古屋市、京都市などへ更なる広がりを見せています。

どんな保障が必要なのか
加入が義務付けられているのは、いずれも賠償責任保険です。すなわち、自転車の運転者には、他人に与えた損害を賠償する能力が求められているのです。実際、自転車が加害者となった事故において、被害者からの損害賠償請求が数千万に及ぶケースが発生しています。このように、自動車事故並みに高額化してきたことを背景に賠償責任保険の加入義務化の流れがでているわけです。
一方で、義務化に伴い保険会社等が推してくる商品の中には、傷害保険や死亡保険がセットになったものも散見されます。それらに必要性を感じるなら加入は自由ですが、傷害保険や死亡保険の加入までもが義務化されたわけではないことは強調しておきます。

どこで加入するか
王道は「個人賠償責任保険(共済)」に加入することですが、単体での販売は控えている保障団体がほとんどです。その場合は、自動車保険や火災保険、傷害保険の特約として付帯します。わずかな額の特約保険料で十分な保障が準備できます。
また、クレジットカードに任意で付帯できたり、初めから自動で付帯していたりもします。複数の契約があっても二重に支払われることはないので、どこかで既に加入がないかどうか、一度確認しておくと良いでしょう。

少し変わったところでは、TSマーク付帯保険があります。これは、自転車安全整備士が点検整備した普通自転車に貼付されるTSマークに付帯する保険で、賠償責任保険と傷害保険がセットになっています。
TSマークは、自転車安全整備店(自転車屋さん)で取り扱っています。 自転車の点検整備(有料)を受けることで貼付され、サービスで保険が付きます。有効期間は1年間です。ただし、点検整備を受ける度にTSマークを更新できるので、年に1度の点検整備を習慣化すれば運行面での安心確保にも繋がります。また、TSマークは自転車について回るものですので、友人に自転車を貸した場合でも対象となります。

各自治体の条例には、保険加入義務に違反した場合の罰則は設けられていません。そればかりか、条例の存在自体をまだご存知でない人も少なくないようです。
本来は地域社会の生活者を守るための条例です。義務化だけが加入の後押しになるのではなく、日常生活のリスクを理解することが先決です。この機会にしっかり考えてみてはいかがでしょうか。


関口 輝(せきぐち あきら)
AFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所長野 主任研究員

 
公開日: 2017年07月13日 10:00