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新設された「産後パパ育休制度」の活用法とメリット
10月1日より「産後パパ育休」という新しい育児休業制度がスタートしました。正式名称は「出生時育児休業」といいます。「産後パパ育休」という名前からわかるように、これは父親(男性)が利用できる制度です。従来からあった育児休業とは別に取得でき、「産後パパ育休」を取得したあとに従来の「育児休業」を取得できます。
「産後パパ育休」は子どもが生まれてから8週の間に、最大4週(28日)の休みを取得できます。まとめて1回で取得してもいいし、最大2回に分けて取得しても構いません。従来の「育児休業」は子が1歳になるまでの間に1回しか休みを取得できませんでしたが、こちらも最大2回に分けて取得できるようルールが変更されました。
つまり父親が育児休業を取得する場合、子が生まれてから、まず「産後パパ育休」を2回に分けて取得、その後に「従来の育児休業」を2回に分けて取得すれば、「子が1歳になるまでの間」に合計4回の休みを取得できます。
「会社に育児休業の制度がある」や「制度がない」といった話ではなく、「育児休業」は公的な制度であり、従業員が育児休業の取得を希望すれば、会社はそれを拒否できません。休業期間中は会社から給与を受けられませんが、育児休業を取得した日数に応じて雇用保険から育児休業給付金が支給されます。支給額は休業開始時の賃金日額の67%、育児休業開始から181日目以降は50%です。
男性が育児休業を取るという習慣はまだまだ一般的ではありませんが、こうした制度の充実により「男性も育児休業を取得しよう」という機運が高まってくるでしょう。
■母親と父親が交代しながら育児休業を取得
母親は子供が生まれてから8週は産後休業に入ります。その間は、会社員等が加入する健康保険から出産手当金が支給されます。産後休業が終了した後は、子が1歳になるまで育児休業を取得できます。育児休業は2回に分けて取得できるようになったため、父親と育児を交代しながら、仕事を継続しやすくなっています。
■育児期間を延長できる制度もある
育児休業は「子が1歳になるまで」取得できますが、子が1歳に達した時点で「保育所に入所できない」などの理由がある場合は、「子が1歳6ヶ月になるまで」期間を延長できます。さらに子が1歳6ヶ月に達した時点でも「保育所に入所できない」等の理由がある場合は、「子が2歳になるまで」延長可能です。
延長を開始する日について、従来は「子が1歳に達する日」または「子が1歳6ヶ月に達する日」に限定されていましたが、延長開始日を柔軟に選べるようルールが変更されたため、延長期間中も母親と父親が交代しながら育児ができます。
ただし、「保育所等に入所できない」ことを理由に延長する場合は、市町村が発行した保育所等の「入所保留通知書」など、保育所等で保育が行われていない事実を証明する書類の提出が必要です。こうした書類は保育所に申し込まなければもらえないため、「保育所等に入所できないとわかっていても、申し込んでおく必要がある」点には注意してください。
なお、延長制度とは別に「パパママ育休プラス」という制度もあります。2010年からスタートした制度で、母親と父親の両方が育児休業を取得した場合、育児休業期間を「子が1歳2ヶ月になるまで」に延長できます。こちらは「保育所に入所できない」などの理由は必要ありません。利用には別途申請が必要な点と、先に父親が育児休業を取得しなければ、この制度は使えない点には注意してください。
■母親が仕事を継続することによる効果
育児休業制度をまとめると以下のようになります。
・ 子が1歳になるまでの間、父親は合計4回の休みを取得できる(産後パパ育休+育児休業)
・ 母親は産後休業(8週)終了後、子が1歳になるまでの間に、合計2回の休みを取得できる(育児休業)
・ 母親と父親の両方が育児休業を取得すると、子が1歳2ヶ月になるまで育児休業を取得できる(パパママ育休プラス)
・ 「保育所に入所できない」等の理由がある場合は、最大で子が2歳になるまで休業を延長できる
・ 育児休業期間中は育児休業給付金が支給される(雇用保険)
分割取得や延長をうまく利用し、母親と父親が協力しながら育児することで、母親が育児と仕事を両立できる可能性が高まります。母親が仕事を継続することによる家計への波及効果が大きいことは言うまでもありませんが、効果はそれだけにおよびません。
育児休業期間中は健康保険や厚生年金の社会保険料が免除されます。免除されている期間は保険料を納めたものとして、厚生年金の年金額に反映されます。また、仕事を継続することで厚生年金の加入期間が増えれば、退職後に母親の老齢厚生年金の受給額も増えます。母親が仕事を継続することで、現在の家計改善につながるばかりでなく、退職後も家計改善に寄与する点も抑えておきましょう。
中山 浩明(なかやま ひろあき)
CFPファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所®長野 主任研究員