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等級制度に見る自動車補償へのスタンス
●多くの契約者は何年間も最大等級・最大割引率に張り付いている
一般に、自動車補償(共済・保険)に最初に加入するのは、免許を取得したり、社会人になって車を購入したりする20歳前後でしょう。6等級または7等級から契約がスタートし、1年間無事故で過ごす(=請求しない)と等級が1つ加算され割引率も大きくなります。
加入しているのが、損保各社の自動車保険であれこくみん共済 coopのマイカー共済であれ、事故を起こさなければ13~14年後には20等級になる計算です。契約者の年齢にすると30代の前半から半ばには最大割引率に到達するわけです。統計データを見たことはありませんが、50代の契約者の大半が、これ以上は割引率の進まない契約を15年、20年と過ごしてきているはずです。
●等級ダウンは無事故期間の長さとは無関係
15年、20年と最大割引率の等級に張り付いてきた優良運転者であっても、一度事故を起こせば容赦なく翌年3等級ダウンします。どれだけ長く無事故で過ごしてきたかが考慮される保障団体はありません。
損保各社の自動車保険であれば、20等級から17等級へとダウンします。契約者の心情としては、「20歳で契約して以来、長年一度も請求しなかったのに、たった1回の事故で3等級もダウンするのか。」といったところでしょう。加えて、30代の半ばから長年張り付いてきた最大割引率の20等級に戻れるのは、早くても3年後と知れば、「無事故無違反を心掛けてきたこの20年間は何だったのか」といった虚しい気分にもなろうというものです。
●22等級の意味
一方で、マイカー共済の場合はどうでしょうか。長年22等級に張り付いてきた優良運転者でも、事故を起こせば翌年3等級ダウンするのは一緒です。しかし、ダウン後の等級は19等級ですから、この1年間を無事故で過ごせば、その翌年には20等級となり、早々と最大割引率へ復帰できるのです。
この違いは、想像以上に大きなものです。
事故を起こして請求すれば3等級ダウンする仕組みであることは重々承知していても、いざ最大割引率の20等級を離れる瞬間が来ると、15年、20年と積み上げてきた無事故の期間がまるで無駄になるような感覚になったり、模範的な優良運転者であり続けてきた自分に対する保険会社のドライな対応に、ある種「裏切られた」ような感覚を抱いたりしてしまうものなのです。
それが、たった1年で最大割引率に戻れるとなれば、「長年、無事故無違反を心掛けてきてよかった」「その努力は無駄ではなかった」と思えるのです。
●割引率の進まない21等級、22等級の意味
このように、割引率の進まない21等級、22等級は契約者にとって十分な意味があります。安全運転に自信のある優良ドライバーには、マイカー共済に加入すべき十分な理由になり得ます。
また、運営する保障団体の立場から21等級、22等級の設定理由を考えると、「少しでも多くの契約者に最大割引率を提供するチャンスを作り出している」と見ることもできます。等級制度の設定ひとつに着目してみても、補償に対するスタンスが如実に表れている気がしてならないのです。
関口 輝(せきぐち あきら)
AFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所®長野 事務局長