全員
インデックスファンド選びのポイント
◆投信の運用スタイルは2つある
投資信託の運用スタイルは大きく分けると、パッシブ運用とアクティブ運用の2つに分けられます。
パッシブ運用というのは、あるまとまった市場全体の動きを反映するように運用する手法のことです。例えば、日本株なら、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった株価指数と同じように動くことをめざす「インデックスファンド」がパッシブ運用を取り入れた代表的な商品となります。特定の指数と同じような運用成績を実現することをめざしています。
一方、アクティブ運用は指数(または指数に採用されている銘柄)にとらわれない・こだわらない独自の運用を行います。商品ごとに一定の「基準」を設けて、入れたい会社だけを抜き出して投信という器に入れます。アクティブファンドは投資する会社を選ぶのにそれだけ手間がかかるため、一般にインデックスファンドよりも手数料が高い設定であることが多いです(アクティブ投信については次回詳しく取りあげます)。
インデックスファンドが「平均をとる」「負けない」運用なのに対し、アクティブファンドはベンチマークに「勝ちにいく」ものから「意識しない」ものまでさまざまです(*)。
インデックスファンドのメリットは「分散効果が高い」「市場全体に投資できる」ことです。インデックスファンドが運用目標とする指数は、多くの場合、たくさんの会社などで構成されています。そのためインデックスファンドを保有すれば、手軽に分散投資を実行できます。
*ベンチマークを上回ることと目標に掲げる投信も多いが、長期的にベンチマークを上回る投信は少ない
◆世界の株式をまとめて持つには
資産形成の土台づくりには「長期」「分散」「低コスト」がキーワードです。そして、特に運用できる期間が長くとれる20~40歳代であれば、まずは世界の株をまとめて持つ、ところから始めてはいかがでしょうか。
世界の株を持つにはいくつか方法がありますが、ここでは代表的な方法についてみていきます。
1つ目は1本で日本を含む世界の株に投資する方法です。例えば、MSCIオールカントリーワールドインデックス(MSCI ACWI Index)やFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスといった指数に連動する投信なら、1本で日本を含む世界株に投資できます。
例えば、MSCI ACWI IndexはMSCI社が算出・公表している全世界株の動向を表す「時価総額加重平均型」の株価指数、日本を含む23の先進国と24の新興国の合計47カ国、約3,000社で構成されています。組み入れられている会社は大型株と中型株が中心です。
FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスはFTSE社が開発した指数で、全世界の株式市場の動向を表す時価総額加重平均型の株価指数。世界の大型株、中型株に加えて、比較的規模の小さい小型株までカバーしているのが特徴です。
2つ目は日本を除く世界株と、日本株を組み合わせる方法です。日本を除く世界株に投資するには、1つ目でご紹介した「MSCIオールカントリーワールドインデックス」から日本を除いた「MSCIオールカントリーワールドインデックス」に連動する投信を活用します。
3つ目は日本株、先進国株、新興国株の各インデックス投信を組み合わせる方法です。先進国株の代表的な指数である、MSCIコクサイ・インデックスは日本を除く先進国22カ国、約1,300社で構成されています。新興国株の代表的な指数であるMSCIエマージング・マーケット・インデックスは24の新興国、約2,900社の会社の株で構成されています。ブラジルやインド、中国などよく聞く新興国だけでなく、フィリピンやインドネシアなどのアジア地域、モロッコや南アフリカなどのアフリカ地域、そして中東なども含まれます。
*株価指数の構成国・会社数は2022年11月末時点。年2回定期的に見直される。
◆家計全体を見て判断しよう
これまで全く投資をしたことがない人は「世界の株を丸ごと持つ」でよいのですが、中にはすでに投資商品を保有している、という人もいるかもしれません。例えば、日本株(個別株や日本株に投資する投信)を保有している人は、これから積み立てていくものは日本を除く世界株や、先進国株に投資をする投資信託だけでもよいでしょう。
また、1つ目、2つ目でご紹介した1本で世界の株に投資する投信や、日本を除く世界株に投資するにはiDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAでは対象となる商品を取り扱う金融機関に口座を開設すればよいのですが、企業型確定拠出年金(企業型DC)では取り扱っていない会社も多いようです。その場合には3つ目の方法を検討しましょう。あるいは商品の採用を担当部署や組合に相談してもよいかもしれません。
◆2つのポイントをチェック
企業型DCやiDeCoでは、各カテゴリー(資産クラス)で、同じ指数に連動するインデックスファンドは1本のみというケースも多いので、「どこの」「何に」投資をするものを選ぶか、つまりどの指数に連動する投信を選ぶかを決めると商品を選択できます。
一方、つみたてNISAや特定口座でインデックスファンドを購入する場合には、同じ指数に連動する投信が複数ある、という場合も少なくありません。そういう時には
●保有中にかかる運用管理費用(信託報酬)が低いもの
●安定的に残高(純資産総額といいます)がふえているもの
を選びましょう。
運用管理費用(信託報酬)については「交付目論見書」に記載されています。また、純資産総額の推移は「月次レポート」を確認しましょう。それぞれ投資信託を運用する委託会社(運用会社)のホームページに記載されています。
最後に、インデックスファンドというと、無機質なイメージがありますが、株価指数はたくさんの会社の集合体です。例えば、前述の「MSCIオールカントリーワールドインデックス」の上位10社には、アップルやマイクロソフト、Amazon、ジョンソン&ジョンソンといった会社が並びます。日ごろから皆さんが利用しているサービスや商品を提供している会社ではないでしょうか。こうした会社の経営陣が良い経営をして従業員が頑張って働いて、よい商品やサービスを提供し、最終的に利益が伸びていけば、結果的に株価指数に連動する投信の価格にも反映されます。投資信託を通して実態のある会社にお金を投じているイメージが持てると、短期的な値動きで「こわい」という気持ちも緩和されるかもしれませんね。
竹川 美奈子(たけかわ みなこ)
ファイナンシャル・ジャーナリスト
LIFE MAP,LLC代表