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手厚くなった近年のがん保険
■がん保険の日本における歴史について
日本におけるがん保険は、1974年から外資系生命保険会社によって販売が開始されました。発売当時のがん治療は、ほとんどが外科手術によるものだったため、保障内容も入院給付金や手術給付金、在宅療養給付金といったものがメインでした。抗がん剤治療や放射線治療を受けた際に給付される保障はなかったため、現在のがん保険とは随分違う保障内容だったと言ってもいいでしょう。
その後、医療の進歩により手術以外の治療方法として、抗がん剤治療・放射線治療も加わり、3大治療が主流となり、入院だけではなく、通院をしながら治療を受けられるようになりました。近年では、仕事をしながら通院治療を受けるケースも珍しくなく、がんは不治の病ではなく、長く付き合っていくイメージに変わってきています。
■がん保険は必要でしょうか?
がんは依然として高額な治療費や収入の低下が心配な病気です。がんの治療は日進月歩で進化していますが、他の病気より治療に高額な費用がかかる病気であることに変わりはありません。
公的医療保険制度に恵まれた日本では、がん保険に加入せずとも健康保険による3割負担、さらに高額療養費も利用できるため、医療費の自己負担は軽減されます。しかし、治療期間が⾧引くと自己負担額が膨れ上がるだけでなく、⾧期間にわたって収入が低下する可能性もあります。会社員や公務員は、病気やケガで4日以上休職した場合、傷病手当金を受給できますが、働いていた時の給与を全額カバーするものではなく、受給できる期間にも限度があります(傷病手当は国民健康保険の方は対象外)。
また国内未承認の新薬を治療に用いる場合は自由診療となり、健康保険適用の治療も含めて医療費は全額自己負担です。陽子線治療や重粒子線治療のような先進医療を受けた場合も、公的保険適用外であるため数百万円単位の技術料が全額自己負担となります。がん保険に加入していなくても貯金で対処できる場合もありますが、一方でお金がないことで治療の選択肢が狭まる可能性もあります。
現在販売されているがん保険は、治療が⾧期間にわたった場合の保障や先進医療を受けた場合の保障などを付加でき、高額な費用負担や収入の低下に備えられます。また、代表的な保障として、がん診断給付金やがん治療給付金などもあります。がん診断給付金は診断時の一時金だけでなく、1年後や2年経過後の再発転移などでも支払われ、がん治療給付金は抗がん剤・放射線治療をした月に月額で支払われ、いずれも多くの保険会社で給付回数は無制限です。がんのみの保障ですから保険料は医療保険より安くなっています。
一方で、がんの罹患について目を向けてみると、確率としては高齢者が高いものの、若い人も決してゼロではありません。
日本人が一生のうちにがんと診断される確率は(2019年データに基づく)
男性65.5%(2人に1人)
女性51.2%(2人に1人)
※出典:国立がん研究センター「最新がん統計」
このように高い確率で罹患しています。女性は若い世代に罹患し、男性は50歳以降に急激に増える傾向があります。
病気になっても十分な貯蓄があり医療費が賄えるなら保険は不要です。しかし、がん治療にはある程度のお金が必要なため、老後のために貯蓄をしていた資金を取り崩せばその後の生活に困窮してしまいます。
公的医療保障制度があることを念頭に、どの程度の給付金を準備していたらいいのか、保障内容をどう考えるか、医療保険にがん特約を付加した方がいいのか、医療保険とがん保険を別々に考えるべきか、保険に加入せず緊急予備資金的に積み立てをしていくのか、様々な選択肢がありますが、安心と納得した準備の仕方が大切です。
田中 美子(たなか よしこ )
CFP®認定者
1級ファイナンシャル・
プランニング技能士
TLC(トータルライフコンサルタント)副称号:生命保険協会認定FP
損害保険上級資格
DCプランナー2級
キャリアコンサルタント