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介護は初めから分担で行うことが肝心

最初にお断わりしておきますが、介護保険制度における「要介護度」に「要支援0.5」はありません。ただし、個人的には要援1と判定されないけれども、高齢者にはさまざまな支援が必要な状況がありえると筆者は考えています。その状況を勝手に「要支援0.5」と筆者は呼んでいるのです。ちなみに、要支援1の判定基準は、要介護認定等基準時間が1日25分以上32分未満の状況です。要介護認定等判定基準時間とは、直接生活介助(入浴、排泄、食事等の介護)、間接生活介助(洗濯、掃除等の家事援助等)、問題行動関連介助(徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等)、機能訓練関連介助(歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練)、医療関連行為(輸液の管理、じょくそうの処置等の診療補助)の5つの分野について計算される介護に必要な時間のことです。

  なぜ、要支援0.5の話をしたかといえば、筆者が実際に体験していることがまさにあてはまるからです。皆さんの参考になればと思い、筆者の体験をお話ししましょう。筆者の母親は4年前に父親を亡くしたことから、実家で1人暮らしをしております。1人で日常的な生活はできるため、先に述べた5つの分野のうち、筆者が支援しているのは「間接生活介助」が中心になります。間接生活介助ですが、その中身は買い物がメインになります。なぜなら、母親は買い物難民だからです。距離的には難民という程ではないのかもしれませんが御歳86歳。たとえば、真夏の暑い日に買い物へ出かけさせるわけには早々行きません。また、お米などの重いものは持って帰れないのです。筆者の実家は、今の住まいから車で片道1時間位のところです。往復2時間はあるため、実家に帰るには土日祝日か、平日であれば休みを取るか、半ドン(午前または午後休む)を取る必要があります。必然的に休みの日は1日つぶれることになり、その状況が父親が亡くなる半年前位から現在も続いています。ここまではよくある話でしょうが、さすがに4年も続くと体力的にかなりしんどくなります。

  何が問題かといえば、間接生活介助といえども4年超も1人で続けていると疲れが累積してくるのです。筆者は2人兄弟ですが、兄は母親の生活に全く関知しません。その状況を続けてきたため、母親は兄をあまり信用しなくなり、兄に間接生活介助を頼もうと母親に言えば「××は何もわからないから頼りにならない(××は兄の名)」と言う始末。母親は時の経過とともに筆者にどっぷり介助を求め、兄は兄で仕事の忙しさを理由に筆者に丸投げという状況なのです。ここから軌道修正をしていくのは大変かもしれませんが、筆者の体力的なことを考えれば修正しなければならないのです。

筆者の体験から見えてくることは、介助をする場合、1人で初めから全てを行ってしまうと介助される側(親)は時の経過とともに、たとえ兄弟がいてもその他の人を頼らなくなる、さらに介助を求めるに要求範囲が拡がってきます。兄弟に頼もうとしても(筆者の場合は兄)、状況を理解しようとしない、他の理由をかこつける等々でなかなか思い腰をあげようとしません。終いには介助の分担を伝えると喧嘩になりそうな怪訝な雰囲気になりました(兄の勘違いもあり)。介護においては、経済的な負担はまず親の財産から行うと共に、介助については1人が全てを行うのではなく、初めから兄弟で分担をする必要がありと思われてなりません。なぜなら、遺言書がなければ資産は法定相続分通り分割されるのですから、その割合に応じて介助は分担すべきと思われるからです。筆者の体験が皆さんの参考になれば幸いです。


深野 康彦(ふかの やすひこ)
AFP ファイナンシャル・プランナー
有限会社ファイナンシャルリサーチ 代表

公開日: 2017年08月03日 10:00