2024年からの新NISAを踏まえ2023年のNISAはどうする
すでにご存じの方が多いと思いますが、12月中旬に公表された令和5年度税制改正大綱によって、2024年からの新NISAの大幅拡充が明らかになりました。
ネット上では「神改正」という声も挙がっているようで、それなりに大きなインパクトでした。正式決定は、通常国会を通過する3月ごろになると思いますが、このまま確定する方向でほぼ間違いないでしょう。
しかし、もともとは令和2年度税制改正で、2024年からのNISA制度の一部変更は決まっていました。変更内容は、このコーナーでも竹川美奈子さんが「いま一般NISAを利用している人は2024年以降どうなるの?(2020年9月24日掲載)」という記事で触れていましたが、一般NISAが2階建ての制度に変わり、年間非課税投資枠が120万円から122万円に上がるという変更でした。
筆者も、この制度改正を前提に、昨年6月「一般NISA vs つみたてNISA、どっちが有利か計算してみた(2022年6月30日掲載)」という記事をまとめましたが、今回の「神改正」とも言えるNISAの抜本的拡充と制度の恒久化が発表されたことによって、試算がまったく無意味になってしまいました。あの記事の内容はお忘れください(涙)。
では、あらためて、現行NISAと、2024年からの神改正後の新NISAの特徴をまとめましょう。
まず、そもそもNISA(少額投資非課税制度)は、NISA口座内での投資から得られる配当金や分配金、売却益に対する20.315%の税金が非課税になる制度。1人1口座に限りNISA口座を開くことができます。複数の金融機関で同時に利用することはできません(1年ごとに利用する金融機関を変更することは可能)。
そして、現行NISAの種類は、以下の3種類があります。
1.一般NISA(非課税枠年間120万円、非課税期間5年)
2.つみたてNISA(非課税枠年間40万円、非課税期間20年)
3.ジュニアNISA(非課税枠年間80万円、非課税期間5年)
1、2が成人向け、3が未成年向け。また、1、2は選択制で、1年ごとに変更は可能ですが、同じ年に同時に利用することはできません。
では、2024年からスタートする新NISAの特徴をまとめましょう。
大きな変更点は、非課税枠が拡大し、非課税期間やNISAの利用期限が無期限化されたことです。
種類は以下の2種類のみ。
1.つみたて投資枠(年間120万円)
2.成長投資枠(年間240万円)
となります。ジュニアNISAは2023年で投資枠が終了し、2024年以降は新規投資ができません。
非課税投資枠は、つみたて投資枠がつみたてNISAの3倍、成長投資枠が一般NISAの2倍に拡大されます。さらに、新NISAでは、2つの投資枠の併用が可能になります。つまり、合計で年間360万円までの非課税投資枠を利用できるのです。
そして、新NISA口座内での投資から得られた配当金や分配金、売却益については、非課税期間の制限がなくなり、何年間保有してもずっと非課税となります。また、従来あったNISAの利用期限も撤廃され、制度の恒久化が決まりました。
ただし、年間最大360万円の非課税投資枠をフルに何年間も使えるのかというと、生涯非課税投資枠というものが設定されるようです。生涯非課税投資枠の上限は合計で1,800万円(うち成長投資枠部分は最大1,200万円)となる予定。
つまり、つみたて投資枠の年間120万円を上限いっぱいでずっと続けていったとすると、15年間で1,800万円に到達しますので、それ以降は非課税投資枠が使えなくなるということです。
一方、成長投資枠年間240万円を上限いっぱい続けると、5年間で1,200万円に達しますので、それ以降はつみたて投資枠(残り600万円)を使うしかなくなります。
また、合計360万円の上限いっぱいまで毎年投資をした場合も、5年間で1,800万円の上限に到達しますので、それ以降はNISA口座での投資ができなくなります。
5年間で上限に達してしまうと考えると、非課税投資枠が小さいように感じるかもしれませんが、もともとの年間非課税投資枠360万円が現行(一般120万円、つみたて40万円)よりもかなり拡大しているので、神改正であるのは間違いないでしょう。
さらに、生涯非課税投資枠1,800万円は、売却することで枠が空いた場合に、その枠を再利用できることになっています。現行のNISAでは売却して枠が空いても再利用できなかったので、この点も改善されたと言えます。
では、最後に2024年からの新NISAを踏まえて、2023年のNISAはどうすべきかを考えてみましょう。
2023年分の一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの非課税枠で投資したものは、その後、5年間(つみたてNISAは20年間)、非課税になります。その投資額は、2024年からの新NISAの生涯非課税投資枠に影響しません。
ということは、2023年の非課税枠は目いっぱい使っておいたほうがよいでしょう。
だとすると、一般NISA(120万円)とつみたてNISA(40万円)の選択は、投資資金が許す限り、一般NISAのほうがよいかもしれません。さらに、18歳未満のお子さんがいるならジュニアNISAの非課税投資枠80万円も使ったほうがよいでしょう。
ただし、5年間(つみたてNISAは20年間)の非課税期間の終了時に、新NISAの口座のほうにロールオーバーする(=非課税のまま引き継ぐ)ことはできないようです。
したがって、同じ銘柄を保有し続けたい場合は、非課税期間が終了する直前に売却し、現金化してから新NISA口座の中で再度購入するしかなさそうです。少し面倒ですが、この方法ならずっと非課税を継続できることになります。
新NISAのスタートまであと1年弱。まだ細かな部分が明確になっていないところもありますし、来年以降の税制改正で変わる部分もあるかもしれません。制度を上手に利用しつつ、今後の制度改正についても見守っていきましょう。
菱田 雅生(ひしだ まさお)
CFPファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所®長野 提携講師
1級FP技能士
1級DCプランナー、
住宅ローンアドバイザー
確定拠出年金教育協会 研究員
アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師