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ターゲット・イヤー・ファンドは買ったほうがよいか

最近、確定拠出年金の運用に関する講演依頼が続いています。講演資料作成のため、各運営管理機関のファンドラインナップを調査すると、必ずといってよいほど「ターゲット・イヤー・ファンド」が採用されています。

■ターゲット・イヤー・ファンドってなに?
国内外の株式市場や債券市場に分散投資する「複合型」の投資信託です。バランス・ファンドに似ていますが、大きな違いは「資産配分が変動する」ことです。

バランス・ファンドの場合、資産配分は固定されています。例えば「株式50%、債券50%」と配分が決まっていれば、将来的にその配分は変更されません。

一方、ターゲット・イヤー・ファンドでは配分が変動します。当初は株式の比率を高めて積極的に運用し、目標の年(ターゲット・イヤー)が近づくと、株式の比率を下げリスクを抑えていきます。つまり、ターゲット・イヤーと自分の退職予定年齢を合わせることにより、退職時期が近づくと自動的にリスクを抑えた運用に切り替えられる・・・というわけです。

■メリット
1)自動的にリバランスしてくれる
リバランスとは、当初決めた資産配分に再調整する作業です。例えば、株式50%、債券50%と設定しても、市場価格の変動により配分がずれていくので、それを当初の配分に戻します。この作業を定期的かつ自動で行ってくれるので「手間が省ける」というわけです。

ただし、リバランスすれば運用成績が良くなるわけではありません。リバランスしないほうが運用成績は良くなるケースもたくさんあります。

2)自動的にリアロケーションしてくれる
リアロケーションとは、資産配分そのものを変更することです。例えば、当初の配分「株式50%、債券50%」を「株式40%、債券60%」という風に、自らの意思で変更することです。「20~40代では株式の組み入れ比率を高めて積極的に運用し、退職年齢が近づく50代になると、株式の比率を下げ、リスクを抑えた運用に切り替える」という場合などに行います。ターゲット・イヤーに近づくと、自動的に株式の比率を下げてくれるので「リアロケーションの手間が省ける」というわけです。

■デメリット
1)コストがやや高い
一般的なインデックス・ファンドやバランス・ファンドに比べると、信託報酬手数料はやや高めに設定されています。リバランスやリアロケーションの手間が省けるので、コストがかかるのは当然ですが、長期投資においてコストが高いかどうかは重要な要素です。

特に近年は信託報酬を相当に引き下げたインデックス・ファンドが増えており、そうした低コストのファンドを利用したほうがよい可能性があります。

2)将来は誰にも把握できない
リバランスやリアロケーションの手間が省けても、それが運用成績につながるとは限りません。例えば、年に1度、定期的にリバランスするよりも、資産配分の変化をとらえ、タイミングよくリバランスしたほうが好成績につながることは、これまでの研究でも検証されています。

また、「年齢が高くなるほど運用リスクを取れなくなる」というのは、思い込みにすぎません。住宅ローンや教育費の支出がなくなる50代以降のほうが、運用リスクを取れる可能性があります。投資経験を積んだ分、20代より50代のほうが運用リスクを取りやすいともいえるでしょう。

そもそも20~30年後のライフプランを見越して、資産配分をあらかじめ決定するなど至難の業。その時々にあわせて柔軟に配分変更するほうが現実的といえるでしょう。

■投資未経験者が「とりあえず買ってみる」ならよし
元本確保型商品を選択するくらいなら、とりあえずターゲット・イヤー・ファンドを買ってみる価値はあります。中身はバランス・ファンドなので未経験者でも保有しやすいはずです。ただし、「手間がかからない」のがメリットですが、「ほったらかし」はもったいない。

自分の老後資金を運用するという自覚をもち、投資と向き合いましょう。1~2年投資を経験し、理解が深まれば、ターゲット・イヤー・ファンドを卒業すればよいでしょう。投資によりお金を増やすこともより重要なのは、自ら考え行動して身に着けた「経験」です。お金そのものよりも「経験」が将来の自分を助けてくれる財産となるはずです。

中山 浩明(なかやま ひろあき)

CFPファイナンシャル・プランナー

生活経済研究所®長野 主任研究員

公開日: 2023年02月23日 00:00