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二輪車こそ自動車保障(保険・共済)に加入すべき
オートバイの免許は16歳から、最短5日で取得できてしまいます(小型二輪AT限定の場合)。あとはオートバイさえ調達できれば、すぐにでも公道を走れます。四輪車に比べ気軽さがメリットである反面、事故やトラブルへの準備は軽視される傾向にあります。
◆任意保険の加入は2台に1台以下
損害保険料率算出機構は、保有車両数に対する任意保険の加入率を用途・車種別に公表しています。それによると、2021年3月末の二輪車(排気量125cc超)の普及率(加入率)は「対人賠償」44.8%、「対物賠償」45.7%です。現在、日本には排気量125ccを超える二輪車が約376万台あるそうで、その半数を超える約200万台は「対人・対物賠償」にすら加入していない計算になります。
250cc超の二輪車には車検制度があるため、自賠責保険の加入が前提となります。しかし、自賠責保険が給付対象とするのは「対人事故」のみで、「対物事故」や「自分自身のケガ」には備えられません。
一方で、250cc以下の軽二輪や原付には車検制度がありません。車検の有無に関わらず自賠責保険の加入は義務付けられていますが、確実な加入を担保する仕組みまではないため、全くの無保障で公道を走っている二輪車も相当数いるのではないかと想像します。
◆二輪車の交通事故実態(東京都)
警視庁交通総務課集計によると、2022年中の東京都内の交通事故による死者数は132人、そのうち二輪車(原動機付自転車を含む)乗車中の交通事故死者数は40人で全体の30.3%を占めています。街で見かける二輪車の比率を想像すれば、いかに二輪車の死亡事故が多いかが推察されます。この傾向は特に東京都が顕著で、全国平均の16.7%に比べ2倍近く高い数値になっています。
東京都内の二輪車の交通死亡事故について、傾向を見てみましょう。
1.通行目的別では、「通退勤」が37.5%で最多。「観光や娯楽・ツーリング(17.5%)」の2倍
2.年齢層別では、「50歳代」が14名と最多。「20歳代(6名)」の2倍
3.事故類型では、「単独事故」が12件と最多。次いで「右折時(9件)」、「出会頭(8件)」の順
4.致命傷部位では、「頭部」が18名(45.0%)で最多で、次いで「胸部」10名(25.0%)」の順
二輪車の交通死亡事故では7割が頭部または胸部へのダメージが原因となっていますが(頭部45.0%+胸部25.0%)、2022年中に発生した二輪車乗車中の死亡事故の27.5%で事故の際に頭からヘルメットが外れています。また、警察庁や国土交通省の協力を得ながら業界団体が推奨している胸部プロテクターの着用率は、わずか約8.9%に留まっています(いずれも警視庁2022年の調査)。
◆二輪車こそ任意保障が必要
損害保険料率算出機構の調査によると「搭乗者傷害」や「人身傷害」の普及率(加入率)は、「対人・対物賠償」よりもさらに低く、「搭乗者傷害」は26.4%、「人身傷害」は15.5%に留まっています。
「二輪車の交通事故は四輪車に比べ被害が軽微だ」という思い込みがその背景にありそうですが、交通事故による死者数の約3割が二輪車の事故によるという東京都のデータを見れば、この認識が正しくないことは明らかでしょう。
また、「最寄り駅までの1キロ程度だから自賠責保険があれば十分だ」という認識も誤りです。二輪車の事故は利用頻度の高さに比例するため、ツーリングのような一時的な利用よりも通勤等の利用時の方が発生しやすくなります。
走り慣れた道への気の緩みや装着の煩わしさから、通勤時に胸部プロテクターを装着する人はほとんどいません。そればかりかヘルメットを確実に被らず、あご紐の結束が緩い人なども多いのではないでしょうか。
いずれも、二輪車のリスクに対する認識の甘さが原因となっているといえます。二輪車は四輪車よりも危険であり、保障の必要性も高いものだと意識を変える必要があります。
関口 輝(せきぐち あきら)
AFP ファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所®長野 事務局長