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私が「こども保険」(学資保険)をおすすめしない3つの理由
今回は、そのうちの1つである「こども保険」(学資保険)を取り上げたいと思います。なぜ私が「こども保険」(学資保険)をおすすめしないのか、その3つの理由を解説します。
そもそも「こども保険」(学資保険)とは、主に生命保険会社で取り扱われている商品で、子どもが18歳や22歳の時点でまとまった学資金を受け取れる「貯蓄性」と、契約者(通常、父親)が死亡した際に、その後の保険料負担が免除されたり、育英年金が支給されたりする「保障」がセットになっているのが一般的です。
取り扱っている生命保険会社によって商品名は異なりますが、業界では「こども保険」と総称されています。かんぽ生命では、民営化前から「学資保険」という名前だったので、一般の人にとっては「学資保険」という名称のほうがメジャーに感じるかもしれません。ちなみに、民間の生命保険会社でも「学資保険」という名称を使っているところもあります。
さて、そんな「こども保険」(学資保険)ですが、私がおすすめしない理由は以下の3つです。
理由①「あまり増えないから」
理由②「保障の必要がない可能性も高いから」
理由③「中途解約時に元本割れする可能性が高いから」
理由①の「あまり増えないから」は、読んで字のごとしですが、現在の「こども保険」(学資保険)は、増えるところでも22年間の返戻率が108%とか109%程度となっています。
返戻率とは、「満期学資金などの受取保険金額合計」を「払込保険料(掛金)の総計」で割ったものです。例えば、22年間の返戻率が108%の商品で、トータルの払込保険料が仮に100万円だったとすると、受け取れる保険金の総額は108万円であることを意味しています。
月払いで22年間保険料を支払って、トータルで8~9%増えるというのは、利回り計算をすると、年利0.7~0.8%程度の複利運用に相当します。
現在の預貯金金利と比べればマシなほうに感じるかもしれませんが、日本の20年満期の国債の利回りが年1.11%程度(2023年4月25日現在)ですので、普通に国債を買ったほうが利回りを高められることになります。
さらに、アメリカの国債なら、現在2年満期や3年満期でも年4%前後の利回りが得られます。為替リスクを伴いますので単純比較はできませんが、15年や20年といった運用期間を使えるなら、多少リスクを取って運用することも可能でしょう。
特に、日本の国債やアメリカの国債なら、保険会社よりも安全性は圧倒的に高いはずです。資産運用の世界の常識であれば、安全性が高いほど利回りは低くなります。
それが、安全性の高い国債のほうが、利回りが高いという状態。逆に言えば、「こども保険」(学資保険)は安全性が低いうえに利回りが低いという状態なので、資産運用の世界の常識に照らし合わせても、利用しないほうがいい商品であると言えるわけです。
理由②の「保障の必要がない可能性も高いから」は、契約者(通常、父親)が死亡したときに、その後の保険料免除とか、育英年金支給、満期学資金支給などの保障は、もともと父親の死亡保障でカバーできているケースも多いでしょう。
父親の死亡保障で十分に学資金などをカバーできているなら、わざわざ「こども保険」に入る必要はありません。そして、「こども保険」に父親の死亡保障の代わりとしての意味合いがないなら、なおのこと利回りが重要になります。しかし、利回りは国債のほうが高い。だとすると、「利用価値はない」となるわけです。
それでも、「金利が高い時代はよかった」と、昔を知っているFPが言っているのを聞いたことがありますが、実は、平成バブル期のような予定利率(≒保険の利回りのようなもの)が高い時代でも、国債のほうが安全性も優位性も高かったのが事実なのです。
例えば、1990年10月に発行された10年満期の国債の利率は年7.9%でした。保険の予定利率は、最も高かったときでも年5.5%程度です。金利が高い時代でも、国債のほうが利回りは高かったのです。
理由③の「中途解約時に元本割れする可能性が高いから」は、保険商品ではよくある話ですが、中途解約をさせないための常套手段。中途解約をする利用者(契約者)にペナルティを課すようなものです。基礎的な金融商品である債券や株式、投資信託などであれば、時価での売却となりますので、元本保証はありませんが、ペナルティ的な元本割れはないのが通常です。
「こども保険」は貯蓄性と保障を兼ねた商品ですので、保険料のうち、保障に回るお金がある分だけ、貯蓄性が下がってしまうのは仕方のないことでもあります。しかし、理由②で触れたとおり、保障の必要性が低いなら、わざわざ「こども保険」を利用する必要がないと言えるわけです。
やはり、今の時代、15年後や20年後の教育資金を準備する場合は、リスクの取り過ぎに注意しつつも、つみたてNISAや2024年からの新NISAを使った積立投資などを有効活用すべきだと思います。
すでに「こども保険」を利用してしまっている人の場合は、これを機会に、いますぐ解約して戻ってくる金額と、将来受け取れる学資金の合計額をもとに、手取り利回りを計算してみましょう。トータルで増える金額を年数で割った年平均利回りでもかまいません。その利回りが年1%に満たない場合は、解約して積立投資も含めた運用に切り替えたほうがよいかと思います。
安全性を重視したいなら日本の国債を中心とした運用。
多少のリスクを取ってもいいと思うなら、米国債や内外株式も加えた積立投資。
このような運用は、教育資金の準備で終了するわけではなく、続けて老後資金の準備に引き継がれていきますので、少しずつでも慣れていくことが重要でしょう。
菱田 雅生(ひしだ まさお)
CFPファイナンシャル・プランナー
生活経済研究所®長野 提携講師
1級FP技能士
1級DCプランナー、
住宅ローンアドバイザー
確定拠出年金教育協会 研究員
アクティブ・ブレイン・セミナー マスター講師