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地震による住宅被害に100%備える方法

地震による住宅等の被害に備えるには、損保各社が取り扱う地震保険やこくみん共済 coop が取り扱う自然災害共済があります。どちらも単独では加入できず火災保障に付帯させて加入します。
地震に備えられる金額は、地震保険が「元となる火災保険金額の50%まで」、自然災害共済が「元となる火災共済金額の30%まで(大型タイプ)」というルールです。いずれも建物の全額はカバーできないことから、「地震等で住宅が倒壊した際は、再建築を可能にする保障制度は存在しない」というのが一般的な解釈です。

◆地震の補償を上乗せする特約がある
しかし、損保各社には、地震補償を上乗せする特約が2つあります。1つは「地震火災費用保険金支払割合変更特約」で、通常は火災保険金額の5%(300万円が限度)が支払われる地震火災費用保険金の支払割合を30%や50%に変更し、地震保険と合わせて補償を100%まで増やせる特約です。ただしこの特約は、地震などを原因とした火災による損害の場合に限って補償します。
2つ目は、「地震危険等上乗せ特約」で、付帯により地震保険と併せて、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災、損壊、埋没または流出による建物や家財の損害に対して100%の補償を受けられるようにします。一般に「地震に100%備えられる」というフレーズでアピールされている特約です。
全ての保険会社がこれらの特約を扱うわけではありませんが、「地震危険等上乗せ特約」の場合、東京海上日動火災保険、損保ジャパンだけでなく、ソニー損保やジェイアイ傷害火災保険といったダイレクト系損保にも扱う会社があります。

◆課題は保険料の高さ
地震の補償が50%から100%になるのだから、特約の保険料も地震保険の2倍になるのではないかと思われるかもしれません。しかし、必ずしもそうではないのがこの特約の難しいところです。官民一体の地震保険と違い、保険会社が独自に運営している火災保険の特約のため、エリアごとの地震リスクを色濃く反映した保険料設定になっています。実際の保険料例を見てみましょう。

A.地震保険の保険料と、地震保険と同額加入した場合のB.地震上乗せ特約の特約保険料

例1)東京都 1,500万円の木造建物の場合(年払い)
A.地震保険(火災保険の50%・750万円の場合) 27,750円
B.ソニー損保「新ネット火災保険」の地震上乗せ特約  33,150円(火災保険は18,732円)

例2)静岡県 1,500万円の木造住宅の場合(年払い)
A.地震保険(火災保険の50%・750万円の場合) 27,750円
B.ソニー損保「新ネット火災保険」の地震上乗せ特約  68,722円(火災保険は20,046円)

例1の東京都は、「B.地震上乗せ特約」の保険料が「A.地震保険」の約1.2倍ですが、例2の静岡県の場合は約2.5倍です。東京都と静岡県の「A.地震保険」の保険料は同額であるにもかかわらず、「B.地震上乗せ特約」には2倍以上の保険料差があります。「地震上乗せ特約」は「地震保険」の付帯が条件のため、静岡県の場合、全体の保険料は建物だけで11.7万円程度になります(火災保険20,046円+地震上乗せ特約68,722円+27,750円)。

◆共済で地震に100%備える方法
共済にこのような特約はありませんが、「地震上乗せ特約」を付帯した火災保険が建物の補償だけで11.7万円もかかるのであれば、共済の活用にも一考の余地があります。こくみん共済 coopを例に見てみましょう。

例)静岡県・45坪・木造住宅・1,500万円・(世帯主は40歳代、4人家族)
<火災共済>
建物の加入上限額:3,160万円
家財の加入上限額:2,000万円              合計5,160万円

<地震補償(自然災害共済・大型タイプ)>
建物の補償額:948万円
家財の補償額:600万円        合計1,548万円

1,500万円の建物に加入上限の3,160万円まで加入し、さらに家財も加入上限の2,000万円までに加入すると、火災の場合は建物価額を大きく上回る5,160万円(建物価額の3.4倍)、地震の場合にも建物価額の100%を超える1,548万円の補償が準備できます。
掛金は建物と家財をあわせて120,228円です。先ほどのソニー損保の例では、家財には加入せず建物の地震補償を手厚くしただけで同程度(11.7万円)の保険料でした。建物だけでなく家財もカバーできているこくみん共済 coop のプランでは地震以外の被害でも、家財だけが被害に遭ったケースでも給付が受けられる補償内容になっています。

「地震上乗せ特約」がなくても地震に100%備えられるのは、共済が建物の取得価額に関わらず「所在地・建物構造・建物規模」の3要素で加入上限が決まる仕組みだからです。「いくらで購入したか」を基準に加入上限が決まる損保各社では実現できない、共済ならではの強みといえるでしょう。

関口 輝(せきぐち あきら)

AFP ファイナンシャル・プランナー

生活経済研究所®長野 事務局長

公開日: 2023年05月25日 10:00