全員

介護サービス情報公表システムを利用しよう

全国の介護サービス事業所の詳細情報が、インターネットで自由に検索・閲覧できたら便利だと思いませんか?そんな重宝なWEBサイトが実際に存在します。「介護サービス情報公表システム」で、介護保険法の規定に基づき都道府県が行う「介護サービス情報の公表制度」の運用のために、厚生労働省が設置しています。

●どんなWEBサービスなのか
「介護サービス情報公表システム(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)」では、全国約21万ヶ所の「介護サービス事業所」の情報が無料で検索・閲覧できます。介護保険法に基づく全26種類54サービスの事業所や施設が対象です。

例えば、介護事業所を検索する場合は、全国版トップページにある日本地図からお住まいの都道府県を選択(クリック)して、各都道府県のページに入ります。
都道府県ごとのページでは、①キーワード検索(事業所名や市区町村名など)ができたり、②本人や家族に合ったサービスを探せたり、③目的や場所に合わせて介護事業所を探せたり、④詳しい条件(ケアマネジャーなど)で探せたりと、利用者ニーズに合わせた検索が可能です。

検索できるのは介護事業者だけではありません。「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」といった高齢者向け施設から、「生活支援等サービス」「地域包括支援センター」「認知症に関する相談窓口」あるいは「医療機関」や「薬局」まで探せます。
各都道府県のページに入ると、左側に「このホームページの使い方」というメニューがあるので、まずはどんな機能があって、どうやって操作するのかを確認してみるといいでしょう。

●事業所の詳細情報が検索できる価値とは
これからの介護を見据えて、「まずは公的介護保険制度を知りたい」といった人に対する基本情報の提供もありますが、もっと差し迫った課題として介護に直面している人もいるでしょう。

例えば、「離れて暮らす親の体調が悪化し、急いで入所する介護施設を探さなければいけなくなった」といったケースです。当初から、入所する施設の目星がついているケースはまれですし、初めて介護と向き合う人の場合には、どうやって施設を探せばよいのかわからないのが普通です。運よく立地条件の良い施設が見つかったとしても、その施設に空きがあるかどうかも確認しなければなりません。介護経験のない現役の子世代が、働きながら親の入所先を探すのは容易ではないのが現実です。

「介護サービス情報公表システム」が優れているのは、こういった場面で役立つ詳細情報がきちんと網羅されている点にあります。
まず、事業所の1つ1つに対して、レーダーチャートによる運営状況の評価が公表されています。評価項目は7つで、「サービスの質の確保への取組」や「相談・苦情等への対応」「安全・衛生管理等」などが、所在する都道府県の平均点と併せて確認できます。施設のパンフレットやWEBサイトでは掴み切れなかった施設の実力がしっかり確認できます。

もちろん、事業所の特色、設備やサービス、利用料金、空きがあるかどうかなども確認できますが、決定的なのは施設で働く人の情報が掲載されていることです。従業員が全部で何人いて、どのくらいの人が離職(退職)しているのかが確認できるからです。

掲載データからは、次の計算で各施設の離職率が求められます。
離職率 = 離職した職員数 ÷ 総従業員数 × 100(%)

公益財団法人 介護労働安定センターの「介護労働実態調査(2021年)」によると、介護業界の離職率は14.3%です。この値を基準として、離職率が高い施設かどうかを判断できます。離職率が30%を超えている施設は要注意と覚えておくとよいでしょう。

一般に、介護のノウハウは人に蓄積されるといわれています。つまり、長期間その施設で働いている人が多いほど、介護の質も高いと考えられます。こういった点を意識する施設は、介護の仕事に長くかかわっていきますし、時間をかけて働く人の育成もします。「介護サービス情報公表システム」には、「経験年数10年以上の介護職員の割合」も掲載されていますから、こういった点からも、介護施設選びに必要な情報の宝庫だといえるのではないでしょうか。

関口 輝(せきぐち あきら)

AFP ファイナンシャル・プランナー

生活経済研究所®長野 事務局長

公開日: 2023年06月29日 10:00