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上昇相場で改めて考えたい「長期目線」の運用

日本株や米国株の上昇を受けて、損益がプラスになった方も多いのではないでしょうか。とくに2008年のリーマンショックの後から投資をはじめた方は、大きな利益を上げている方もいるかもしれませんね。喜ばしいことではありますが、気をつけたい点もあります。今回は、上昇相場で改めて考えたい「長期目線」の運用について考えていきましょう。

●安全資産と投資資金の比率も意識
皆さんが投資をする場合、最大損失額などを考慮して投資に回してもいいお金を決めていると思います。ところが、上昇相場のときは「もっと投資したい」という気持ちが強くなり、預金など安全資産においてあったお金を投資に回してしまう方も。しかし、投資比率をむやみに上げるのは慎重にしましょう。
安全資産(元本保証の預金など)と投資に充てるお金の比率は意識しておきたいもの。例えば、ある人が自分のお金の割合を安全資産6割、投資資金4割に決めていたとします。ところが、株価などが上昇して運用していた投資資金が増えて、結果的に安全資産5割、投資資金6割になりました。その場合、例えば投信などに投資していた分を一部解約して、預金などの比率を増やして調整を行いましょう。
通常「リバランス」というと、投資しているお金の中だけで行うイメージが強いですが、「安全資産」と「投資しているお金」の比率もしっかりみておきたいものです。そうした調整をすることで、結果的に上がったリスク資産を一部利益確定することができますし、逆に安いときにリスク資産を購入していくことができます

●ポートフォリオを決めて淡々と投資を継続
また、急上昇している地域や資産があると魅力的に映るものです。そこで、従来の資産配分を無視して、例えば「日本株を買ってしまおう」といったことを行う人もいます。しかし、それはあきらかにリスクの取り過ぎになってしまいます。
「次はどこが上がるだろう」「もっと上がるのはどの地域・資産だろう」と、ピンポイントでアテにいく投資は、長期の資産形成が目的であれば、おススメしません。相場観を入れて「今はこの地域・資産を買いたいのだ」という人は、あくまでも「サテライト」的な位置づけとして、投資資金全体の中で一定の比率に抑えることを心掛けてください。

●リスク管理を徹底する
リターンは事前に予測することができません。たとえば、公的年金や企業年金などの運用を行う機関は「期待リターン」を公表していますが、その数値はバラバラです。また、同じ資産クラスや、複数の資産の組み合わせをみても、運用する時期や期間によってリターンにはかなりの差があります。つまり、事前に「このくらい」とはっきり分かるわけではないのです。
そこで、「いかに儲けるか」を考える前に、まずは「コストを抑えること」、そして、「分散投資を行うことでリスク管理を徹底すること」を心掛けたいもの。ただし、分散といっても、同じ方向に動く資産ばかりを持っていても意味がありません。ある投資家の方が「今のような上昇相場で(運用資産の中で)下がっている資産があるとホッとする」と言っていましたが、一理あります。ほとんどの資産が下がったときにも反対に動く(この場合は上がる)資産を持っているということですから。

いずれにせよ、相場がよくなって「今」利益がでていたとしても、それはあくまでも「今」の話。「長期分散投資」は長期の話であり、資産分散の話ですから、リタイア時をめざしてまだまだ続きます。長期的な目標を立て、リスクを考えた上で、資産配分を考えて、商品を選んで「分散投資」を行う。こうした基本を抑えた上で、このあともゆったりと構え、相場とうまく付き合っていくというスタンスが大切です。

竹川 美奈子(たけかわ みなこ)

ファイナンシャル・ジャーナリスト

LIFE MAP,LLC代表

公開日: 2023年08月03日 10:00